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成育科ブログ

東奥日報連載18回目 小児医療費助成の自治体間格差問題

2015.06.18

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東奥日報夕刊の連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」は今週月曜日が18回目でした。
今回は小児医療費助成の自治体間格差問題を取り上げてみました。
青森県は乳幼児医療費助成制度が自治体間でかなりの差はあるものの全般的にみれば非常にpoorです。本文中に示した扶養家族が1名の場合の所得制限額272万円と言うのは、この制度自体における最低基準額に相当します。青森市以外の市部が全てこの水準なのですから県全体でみると全国でも最低レベルなのではないでしょうか?本文中にも書きましたが、パリビズマブ投与に際して医療費のことをこと細かく説明しなければならないことを県外の先生方にお話しするとかなり驚かれます。
「親の所得によって子どもが適切な医療を受けられない社会」
これが青森県の現状です。あらゆる制度で子どもの立場・権利からの視点が抜け落ちている気がします。

ご参考までに本文中にある当科で調査した自己負担額のスライドをお示しします。
自己負担額の現状 (Custom)
助成を受けられなかった家庭 (Custom)

第18回目 (Custom)

以下、連載18回目本文です。

今回は本県の小児医療費の問題がテーマです。小児の医療費は一般的に成人に比べて高額になりにくい分野です。治療期間が長くなる「小児慢性特定疾患」に該当する場合は、医療費の大部分が無料になるなど、医療費が抑えられる制度もあります。しかし近年、子ども向けの高額な薬剤が登場し、医療費が高額になるケースが出てきています。

皆さんは「RSウイルス」と言うウイルスをご存じでしょうか? このウイルスは秋から春にかけて、特に冬期に流行し、お子さんは2歳までにほぼ100%感染するぐらい、とても一般的なウイルスです。通常は発熱・鼻汁などを伴う上気道炎を発症し、数日で自然に治ります。ただ、このウイルスは早産児の場合、生命にかかわるほど重篤化する場合があります。赤ちゃんはへその緒を介してお母さんから感染症に対する抵抗力となる抗体(これを「移行抗体」と言います)をもらいますが、早産児の場合、この移行抗体量が少ないため、成熟児であれば軽い上気道炎で済むところが、気管支炎や肺炎などの下気道炎まで進展するリスクが上昇します。

これに対して、RSウイルスによる呼吸器感染重篤化予防のための注射があり、早産児の場合、秋から春にかけて毎月1回注射することが望ましいとされています。ところが、この注射は小児に投与する薬剤の中では飛び抜けて高価です。乳児医療の自己負担分を仮に2割とすると、窓口負担は1回あたり3~5万円にもなります。これを毎月投与するわけですから、公的助成でもなければ、どのご家庭でも支払いは難しいでしょう。県病での調査では、この注射を双子のお子さんに1シーズン投与し40万円の自己負担が発生した方がいました。

小児の医療費は、全国的に医療費助成制度により無料化の方向性にあるものの、制度運用は市町村に一任されており、居住地によってその運用は多様です。親の所得に関係なく無料化されている市町村もあれば、一定の所得制限が設けられている市町村もあります。

この所得制限も、かなり低い所得の方のみに設定されているか、ほとんどの家庭が対象となるかによって、まったく状況が違います。青森県の場合、市で所得制限がないのは黒石市とつがる市のみ。その他の市には制限があり、またそのラインが大きく異なります。例えば扶養親族が1人の場合、青森市の所得制限ラインは532万円ですが、その他の市では、青森市の半分以下の272万円ほどとかなり低めです。所得がこのラインを超えると、前述のRSウイルスに対する注射では毎月3~5万円の自己負担が発生してしまいます。

首都圏にお住まいの方が本県の某市へ転居された際、小児医療は無料と思い込んでいたところ、この注射の金額を聞いて転居後の投与継続を断念したというお話もよく耳にします。私たちもこの注射の説明をする際、どこにお住まいで、助成制度の対象になるかどうかの確認を必ず行うようにしていますが、そのような現状を他県の先生に話すと一様に驚かれます。

親の所得によってお子さんの医療に制約がかかってしまう社会は、誰も望まないのではないでしょうか? しかし、本県ではそれがすでに現実のものとなっています。

先日、昨年の人口動態統計が発表されました。本県の出生数は2009年に1万人を割り込んで以降も減少傾向が続き、昨年はついに8853人と9千人をも割り込んでしまいました。以前も述べたように、本県の出生数減少率は全国でも秋田県に次ぎ2番目に高く、この年間で約40%も減っています。人口減少による自治体の存続も危ぶまれる昨今、お子さんの医療費負担すら他県に大きく後れを取っていて良いものなのでしょうか?

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