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成育科ブログ

東奥日報連載21回目 母乳に「こだわる」?

2015.09.10

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が21回目でした。今回も前回に引き続き母乳育児の話題を取り上げました。母乳育児では、よく「母乳にこだわる」という表現が使われますが、今回はどうして「母乳にこだわる」という表現になってしまうのか、その理由を考えてみました。

第21回目 (Custom)

以下、本文です。

母乳育児に対して、よく「母乳にこだわる」という表現が使われます。今回はどうして「母乳にこだわる」という表現になってしまうのか、その理由を考えてみたいと思います。

まず、母乳分泌の仕組みを知っておく必要があります。母乳分泌には「プロラクチン」というホルモンが欠かせません。このホルモンは脳の下の方にある脳下垂体から分泌され、母乳を分泌させる作用があります。プロラクチンは妊娠中から血中濃度が上昇しますが、妊娠中には母乳はほとんど出ません。それは胎盤からプロラクチンの作用を抑える別のホルモンが出ているからです。赤ちゃんが生まれると一緒に胎盤も出てくるので、そこで初めて母乳分泌が始まります。しかし胎盤からのホルモンの値が下がるのには数日間かかります。お産直後からすぐにたくさんの母乳が出ないのはこのためです。

産後、赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸った時(これを吸啜(きゅうてつ)と言います)、プロラクチンの血中濃度は一時的に急上昇します。逆に吸啜刺激がないと、プロラクチンの血中濃度は1週間ほどで妊娠前の値まで急降下すると言われます。短い間隔で何度も授乳を行い、赤ちゃんに頻繁におっぱいを吸ってもらうことによって、プロラクチンの下降を抑え、その値を維持させているのです。

一方、この間におっぱいの方にも変化が起きています。お産の後、継続的に何度も吸啜刺激を受けプロラクチン値が維持されることによって、母乳を分泌させる乳腺細胞が、プロラクチンの作用を受けやすいように変化していくのです。お産から2週間も過ぎると、授乳回数の多いお母さんでもプロラクチンは低下しますが、お母さんのおっぱいの方が変化することで、低い値でも母乳が分泌できるのです。

以上をまとめると、母乳の分泌には赤ちゃんが頻回にお母さんのおっぱいを吸啜する必要があるということになります。
しかしここで、生後まもなくから人工乳をどんどん飲ませるとどうなるでしょうか?

生まれたばかりの赤ちゃんの胃袋は、そもそもそれほど多くの乳汁を飲めるようにはなっていません。赤ちゃんの胃袋の内容量は生後1日目で6㍉㍑、3日目でも25㍉㍑程度です。人工乳は母乳に比べて消化が遅く「腹持ちがいい」ため、人工乳をたくさん飲まされた赤ちゃんはお母さんのおっぱいをあまり吸ってくれなくなります。つまり、人工乳をどんどん飲ませることは、母乳を出なくしているのと同じことと言えます。逆に母乳はとても消化がいいので、赤ちゃんはおなかが減って泣く感覚が短くなります。これが「おっぱいが少ないのではないか?」という誤解を生む原因にもなりますが、本当は赤ちゃんに数多く吸啜してもらうためにうまくできているとも言えるのです。

ここで最初の話に戻します。なるべく人工乳を加えず赤ちゃんに何度も吸啜の機会を与えることが、こうした仕組みを理解していない人から見ると「母乳にこだわる」ように見えるのでしょう。しかし、お母さんが「母乳で育てたい」という希望があるなら、人工乳をたっぷり飲ませながらでは、その希望には応えられないということになります。

ただし、これには個人差があります。いくら吸啜させても母乳の量が増えないお母さんもいれば、どんどん人工乳を飲ませてもいつの間にか母乳だけになっているお母さんもいます。母乳育児を語る上で難しいのは、こうした個人差の大きさであり、さらに言えば、母乳の効果なども含めてすべて確率論でしかないという点です。この辺のお話は、また次回以降にしたいと思います。

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