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成育科ブログ

月刊「新医療」にNICU部門システムの紹介をしました

2016.06.18

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しばらく前に 月刊「新医療」 と言う雑誌から「特定診療科専用情報システムの有用性を知る」と言う特集を組むとのことで、NICUにおける部門システムに関する執筆依頼がありました。タイトルは「医療安全を重視したNICU部門システム開発・導入の概要と将来的展望」で、シリンジポンプの流量認証からビッグデータによるリアルタイムスタディの提案まで含めて「NICU部門システムかくあるべし」と言う思いをぶつけたつもりです。ご覧いただければ幸いです。

表紙 (Custom)

「医療安全を重視したNICU部門システム開発・導入の概要と将来的展望」

◆当院NICU部門システムの特徴
1)部門システム導入の背景と開発コンセプト
当院のNICU部門システムの特徴としては、①入力端末には電子カルテ端末を兼用し、院内どこでも指示出し・閲覧が可能、②LAN接続されたタブレットPCによりリアルタイムの指示伝達が可能(図1)、③点滴コーナーではタブレットPCで指示確認するため転記が介在しない、④リスクマネジメント上、注射・処方のみならず、コストに反映されない母乳にもバーコードによる個人認証が可能、⑤ソフトウェアはMicrosoft Internet Explorerを使用しており特殊なソフトウェアはインストール不要で比較的安価にシステムが構築できる、などの特徴を有している。さらに近年のバージョンアップでは、患児の状態を把握する上での評価ツールや、診療成績の全国集計および臨床上のパラメータを患者情報を匿名化した上で抽出する機能なども加えられている。

図1

図1

2)医療安全機能
医療安全機能は大別して1) 患者認証機能、2)指示入力支援および制限機能、3)その他の機能から構成される。
①患者認証機能
NICUではタブレットPCが患者と1対1で配置され(図2-1)、医師の指示はリアルタイムにタブレットPCに反映される。点滴・注射の際には、1)看護師がタブレットPCからラベル印刷、2)点滴コーナーのタブレットPCでそのラベルをバーコードリーダーで読み込むと、当該患者の指示画面が表示される、3)看護師は画面を見ながら点滴調製を行う(図2-2)、4)作成された点滴・注射は患者への投与直前に担当看護師が自分自身のスタッフバーコードを読み込むことでログインした上で、ラベルも認証し実施される(図3)。これら一連の動きにより、看護スタッフ、患者、薬剤の三者認証が実施される。

図2

図2

図3

図3

処方も母乳を含む栄養もほぼ同様の動きで認証され、認証はそのまま指示の実施記録とも兼ねており、後述する会計にも反映される。NICUでは母乳間違いは感染面での問題に加えて母親の心情的なダメージにもつながることから、特に注意が必要である。母乳の調乳に際してはバーコードの貼付された空瓶が栄養課から払い出され患者認証が可能となっている(図4)。

図4

図4

② 指示入力支援および制限機能(図5)
NICUでは刻々と変化する新生児の状態の即したきめ細やかな指示の記載が必要な一方で、薬剤の過量投与などは重大な影響を与えることも多く、誰が入力しても「間違えようのない」仕組みが必要である。NICU部門システムはこの「二律背反」解決に大きな役割を果たしている。
当院の部門システムでは、入力支援機能としては、例えば、ニトログリセリンでは専用の非吸着チューブと遮光の必要もあるが、こうした薬剤ごとの約束事は予めマスタ登録しておくことで自動入力させることが可能である。さらに静注薬や循環作動薬などの投与量は体重当たりで自動計算されるので、それを参考にした指示入力が可能である。この他、頻繁に出される指示に関してはセット入力機能もある。
一方、指示入力制限機能としては、①上述の自動計算機能に付随した極量チェック機能、②注射薬の配合禁忌チェック機能(同一シリンジ内だけではなく別シリンジから同一ルートで合流時にもチェック可能)などの機能を備える。

図5

図5

③ その他の機能
a) 未実施指示アラート機能
予定時刻でも未実施の指示に対しては赤い点滅で警告する。
b) ダブルチェック機能
NICUの看護業務は確認の連続である。患者認証は確認業務全体のごく一部に過ぎず、「人の眼」に頼らざるを得ない確認業務も多数存在する。そうした業務の多くでは看護師2名によるダブルチェックが行われるが、従来はその記録は紙媒体以外では困難であった。当院の部門システムではログイン者に加え、ダブルチェックに参加したもうひとりの看護師のバーコードを読み込むことでダブルチェック実施の記録を電子的に行うことが可能となっている。

3)診療援助機能
看護師の記録では入力の省力化を図るため、定型業務の記録はバーコードリーダーを用いた記録を多用している。ちなみに、これはコンビニおでんの会計からヒントを得ている
またNICUでは早産児が無呼吸に陥りやすく、その回数や程度の記録が紙媒体以外ではなかなか実現困難であった。当院の部門システムでは、無呼吸の程度が、酸素飽和度低下のみ、心拍数低下のみ、両者の低下と、回復が自力なのか刺激を要したかの組み合わせで予めバーコード集に記載されており、それを1回読み込めばその時間帯の回数がカウントされていくと言う仕組みを構築した(図6)。
この他、インアウトや水分バランスを8時間ごとに1週間分を1画面に表示可能(図6)、体重や頭囲の経時的なグラフもボタン一つで表示が可能である。

図6

図6

4)他部門との連携
当院の部門システムは医事会計システムとは直接連携はされていないが、注射・処方などの薬剤投与以外にも看護師が施行した様々な処置(例えば、保育器使用、人工呼吸管理、酸素投与、浣腸、内チューブ挿入等々)の会計は実施実績から自動的に一覧票が作成され、それが電子伝票の形となって医事課で処理される(図3)。部門システムと医事システムの連携は技術的には不可能ではないが、システム間の連携コストの方が人件費を大きく上回ることから現在のような運用となっている。当院に導入されている電子カルテシステムでは実際の医療行為とは全く別に会計のためだけに入力を要する処置オーダーが存在するが、当科の部門システムではこのような「人的に無駄な行為」は要さない。医療者は医事会計のことを全く意識せず、医師は指示を出し、看護師は指示を実施さえしていれば、会計伝票は自動的に作成され医療行為に専念できる仕組みとなっている(図7)。

図7

図7

◆将来的な可能性
1)認証機能のさらなる進化
本システム導入以降、患者間違いは母乳間違いも含めほぼ根絶され、その他の患者間違いも皆無となった一方、医療機器の設定ミスの比率が相対的に高くなり、特にシリンジポンプの流量設定間違いが問題となっている。「点滴速度は本当に指示と設定が合っているのか?」と言う、いわば哲学的とも言える課題が今なお大きく立ちはだかっている。現時点では設定流量を手入力することによる確認(図3)とダブルチェックによって対処しているが「人の眼」による確認の精度には限界があり、「機械の眼(=バーコードリーダー)」による確認システムが必要と考えられる。そこで外部通信機能を有するシリンジポンプからリアルタイムの流量設定値を液晶にQRコードとして表示させ、QRコードリーダーが読み込み可能な情報に変換することで、この情報をNICU部門システム内に取り込み、指示内容と一致しているか否かをチェックさせるシステムを構築した(図8)。今後こうした医療機器とシステムとの連携強化および進化により、確認できる範囲を更に拡大していくことが、より安全な医療の提供と、また働く者にとっての安心につながって行くものと考えられる。

図8

図8

2)医療情報の二次利用
当院では患児のバイタルサインや治療内容は全て部門システムに保存されており、全てテキスト情報として抽出可能である。当院NICUでは2011年から超低出生体重児の循環管理方針を大幅に変更し、それ以前と比べて急性期の重篤な合併症である脳室内出血や消化管穿孔、さらに死亡率や在宅酸素療法が必要なる率を大幅に改善させることに成功した。当院のシステムでは急性期の治療内容および患児のバイタルサインや水分バランス等を生後120時間まで8時間ごとのデータを自動抽出可能であり、実際に治療方針変更前後5年ずつを前期・後期として比較したところ、前期に比して後期では、薬剤投与量・水分量の変動が少なく、血圧・心拍数・水分バランスも安定していた(図9)。

図9

図9

当院のシステムではパラメータを設定すれば患者情報を匿名化した上でcsvファイルとして書き出しが可能であり、ほんの数分で膨大なデータの比較が可能となっている。こうした機能を全国のNICUに導入し、データ収集を行い解析することができれば、どのような傾向を持つ施設の成績が優れているのかも瞬時に判明することであろう。今後はこうしたビッグデータを活用することによって、前方視的でもなく後方視的でもない「リアルタイムスタディ」によるエビデンス構築が可能となるのではないかと考えられる。

◆おわりに
新生児医療において患者は医療機関を選ぶことができない。しかし一方、こうした部門システムを導入しているか否かによって提供しうる医療の安全性において大きな施設間格差が生じている可能性がある。少なくとも最低限の機能として成人領域において一般化している処方量の極量チェックや患者認証などのリスクマネジメント機能は新生児領域においても必須条件とされるべきであろう。医療情報が電子化されている今日だからこそ可能であるはずの医療安全機能が、今後、新生児医療領域においても一般化され、さらにはこうしたシステムの普及が全国の新生児医療水準向上にも寄与することが期待される。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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