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成育科ブログ

東奥日報連載35回目 「一人飲み」㊤~新生児医療現場の「悲鳴」

2016.08.18

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が35回目でした。今回は先月の「 『一人飲み』アンケート2015~日本周産期・新生児学会in富山 その5 」でもご紹介した、GCUにおける赤ちゃんの「一人飲み」をいよいよ取り上げてみました。この「一人飲み」に関しては以前から、と言うよりもこの連載をお引き受けした時からいずれ取り上げたいと心に決めていたトピックです。今回はまずこうした現実があることをご紹介した上で、来月の36回目には、その背景に関して何が問題なのかを解説したいと思っています。

第35回目 (Custom)

以下、本文です。

突然ですが、写真の赤ちゃんは何をしているところか分かりますか? ベッドに寝ている赤ちゃんが、立てかけられた哺乳瓶を「ひとり」でくわえていますよね? これは「一人飲み」と言って、NICU(新生児集中治療室)の中でも回復期病床にいる、集中治療が一段落した比較的軽症の赤ちゃんが哺乳しているところです。
このような「一人飲み」が実際の新生児医療現場で行われているとしたら、そして、ご自身のお子さんやお孫さんがNICUに入院していて、このような授乳をされているのを目撃したら、どのように思われるでしょうか?
この「一人飲み」に関しては、全国の新生児医療施設を対象とした調査が今から10年前の2006年に行われ、昨年2回目の調査も行われました。
06年には全国の施設のなんと過半数で、昨年の調査でも半数近くの施設で、特に多忙時に行われていることが明らかとなっています。幸い、本県で「一人飲み」を行っていると回答した施設はありませんでした。
NICUは大きく二つのセクションから構成されます。一つは急性期の重症患者を治療する狭い意味でのNICUで、ここでは看護師1人あたりの受け持ち患者が3人までと定められています。
もう一つは、先ほどご紹介した回復期病床で、こちらは赤ちゃんだからと言って特に看護師の配置が厳密に定められているわけではなく、成人と同じ一般病床の扱いとなっています。このため、特に夜勤帯に人手不足となる施設が多く、10年前の調査では、全国平均で一人の夜勤看護師が9~10人の赤ちゃんを担当していました。
昨年の調査では、平均で6・5人程度までに改善してきてはいますが、それでもかなり多忙です。また、近年のNICU不足のため、回復期病床の赤ちゃんの重症度が相対的に上がっているという背景もあります。調査でも、「一人飲み」をしなければならない理由として最も多かったのが、「回復期病床における看護師1人の受け持つ患者数が多すぎるから」でした。
急性期を過ぎ、全身状態が落ち着いているとは言っても、まだ入院が必要な赤ちゃんですから、こんなことをして大丈夫なのかと思われるでしょう。まさにその通りで、「一人飲み」を行っている施設の約4分の1でトラブルを経験しています。中には「チアノーゼ(低酸素血症のために顔色が悪くなること)になった」「哺乳瓶が外れていた」などの事例も報告されています。
一方、看護師さんたちも平気で「一人飲み」を行っているわけではありません。調査では「できることならこんなことはしたくない」「抱っこして飲ませてあげたい」「赤ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱい」という声が多数ありました。
あまりにも多忙で、看護師の配置を増やしてほしいと泣きながら病院に訴えても、診療報酬に直接結びつかない看護師の配置強化など全く取り合ってもらえず、結果的に看護師さんのモチベーションが下がって離職に至るような事例もあります。看護師の側にも、大きな心の傷を残しているようです。
こうした現状を目の当たりにして憤りを感じながらも、どうにもできないもどかしさが調査回答ににじみ出ていました。まさに現場の「悲鳴」と言えるでしょう。
「一人飲み」の最大の理由は、看護師さんの人員配置の不備にあります。それがなぜ解消されないのでしょうか? その理由は次回述べたいと思います。

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(文責 成育科 網塚 貴介)

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