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成育科ブログ

東奥日報連載39回目~産科病棟の新生児は「母の付属物」扱いが実情

2016.12.22

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が39回目でした。今回は産科病棟における新生児の扱いの問題を取り上げてみました。ショッキングなタイトルかとは思いますが、これがまた現実でもあります。まずはご覧いただければと思います。

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以下、本文です。

 日本では病院や診療所といった医療機関での施設分娩(ぶんべん)がほとんどです。ただ、産科病棟で生まれる赤ちゃんの位置づけはかなり「グレー」なものがあります。
生まれてすぐに明らかな異常が見られない赤ちゃんは、病気ではないので正規の入院患者とはみなされません。もちろん、産科の助産師さん、看護師さんは赤ちゃんのケアを行うのですが、それはあくまで正規の入院患者であるお母さんのためのスタッフであって赤ちゃんのために配置されたスタッフではありません。診療記録(カルテ)に関しても、赤ちゃんの記録をお母さんのカルテに記載する施設も多く、その扱いは医療機関によってさまざまです。
こうした現状に対し、日本未熟児新生児学会(現日本新生児成育医学会)は、2012年に出した「正期産新生児の望ましい診療・ケア」の中で、赤ちゃんが「母体の付属物として扱われている」と指摘した上で、産科で生まれた赤ちゃんの診療の基本として、「1.新生児用の診療記録(カルテ)を作成する」、「2.母親の看護とは別に、新生児のために適切な看護師・助産師を配置する」ことを求めています。
また、米国小児科学会のガイドラインでは、看護師・助産師の配置は赤ちゃん6~8人に1人、または健康な母子3~4組に1人が望ましいとしています。赤ちゃんの観察については「生後2時間安定した状態が続くまで少なくとも30分毎(ごと)に評価して記録する」と提言しており、「正期産新生児の望ましい診療・ケア」でもこの提言を支持しています。
一方、2014年に日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が出した「産婦人科診療ガイドライン─産科編2014」では、「生後早期から退院までの新生児管理における注意点」の中で、「体温、体重、呼吸状態、哺乳状況、活動性、皮膚色(黄疸(おうだん)、チアノーゼ等)を定期的に観察する」との表現にとどまっており、赤ちゃんのカルテの作成やスタッフ配置には言及していません。
実は、赤ちゃんの看護体制に関して、産婦人科サイドと小児科サイドで見解の相違があるのが実情です。背景には、赤ちゃんにまでスタッフを配置することの経済的問題や看護師・助産師の不足、さらには赤ちゃんを正規の入院患者にすると病院や診療所のベッド数の問題にまで広がるなど、さまざまな要因があります。
前回、生後すぐのカンガルーケアに際して、スタッフがいない環境で事故が起きていることを紹介しましたが、医療機関におけるこうした「グレー」な扱いこそが、赤ちゃんに目が届かない背景となっているのです。
生後間もない赤ちゃんは元気に生まれてきたとしても、まだまだ不安定な状態です。カンガルーケアをしていなくても、赤ちゃんの急変や死亡事故は起きています。
以前、生後数時間で亡くなった赤ちゃんが新生児室で泣いている時期、つまり亡くなる少し前の様子を動画で見せていただいたことがあります。赤ちゃんは鍵のかけられた新生児室のベッドに寝かされ、スタッフは休憩中でした。ガラス越しに面会していたご家族が、心なしか赤ちゃんの泣き声が徐々に弱々しくなって、少しして動かなくなり、おかしいと感じて休憩中のスタッフを呼びに行ったときには手遅れでした。
泣き声が弱くなり始めた頃、ちゃんと診察をして呼吸数や心拍数、顔色を観察していたら経験のあるスタッフであれば異変に気づいたことでしょう。
こうしたことは頻繁に起こることではありません。しかし、一定のルールにのっとって観察していれば、すべてとは言えなくても、助かる命もあります。何より大切なのは、赤ちゃんも「一人の人間」として扱われることではないかと思います。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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