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成育科ブログ

東奥日報連載最終回~声なき声を聞くために

2017.03.16

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日でついに最終回を迎えました。

今回のタイトル「声なき声を聞くために」はかつて埼玉医科大学総合医療センターで研修させていただいたtときにご指導いただいた故小川雄之亮教授が平成14年に亡くなられる前に病床でUrological nursingと言う雑誌に記された同じタイトルのエッセイから引用させていただいたものです。このエッセイで小川先生はその最後で「患者さんが訴えたことを聞くことは簡単なことです。しかし多くの場合、患者さんの声は弱いものです。訴えようがないのかも知れません。訴える術を知らないのかもしれません。声なき声を聞き取るのが私ども医療従事者の努めでありましょう。」と記されています。

(故 小川 雄之亮教授追悼祈念業績集・文集より)

(故 小川 雄之亮教授追悼祈念業績集・文集より)

昨年、 院内広報誌「ふれあい」の成育科紹介 でも書きましたが、成育医療の先駆けとなった国立成育医療研究センターのホームページには「私どもは子どものためのアドボカシー(advocacy:自己主張できない存在の代わりになってその存在のために行動をおこすことをアドボカシーと言います)の理念を持つことが基本と考えます。」とあります。

小川先生のエッセイ、そして成育医療の理念に共通するのが「声なき声」の代弁者としての立ち位置なのではないかと思います。実は、今回のこの連載のお話しをいただいた時から最終回はこのタイトルにしたいと思っていました。しかし、最終回でも述べたように何も知らなければ「声なき声」を聞くことはできません。「声なき声」を聞くためには、まずとにかく現状を知ることから始めなければならない、この連載のタイトル「知ってほしい赤ちゃんのこと」もまたこうした思いからつけました。

この連載が始まったのが2014年のちょうどねぶた祭りの頃でしたので2年半以上もやっていたことになります。ここまで続けることができたのも、この連載の担当である東奥日報社の八島さんのお陰です。文字数制限の厳しい中、いつも文字数オーバーの原稿を、文意を変えずと言うよりも、どこを直されたのかも書いた本人が気づかないぐらい内容を尊重して修正して下さいました。「文章を書く」と言うことの難しさを感じるとともに、とても勉強になった2年半でした。八島さんのお力なしにはここまで続けることはできなかったと思います。最終回を迎えるにあたり、八島さんに心より感謝申し上げます。またこれまでご愛読下さった読者の皆様にも感謝いたします。正直なところ、まだまだ書き足りないことや、これから起きることで書かなければならないと思うことも多々あるかと思いますが、そうしたことはこれからもこのブログで少しずつでも書き続けて行きたいと思っています。ありがとうございました。

最終回 (Custom)

以下、最終回の本文です。

皆さんがお住まいの地域で、例えば、夜間救急が閉鎖すると聞いたらどうでしょう? 多くの方が不安を感じるのではないかと思います。それでは、「本県新生児科医不足深刻、存続の危機」というニュースではどうでしょうか? 不安になる方はどれだけいるでしょう? おそらく妊娠中の方も含めて、直接的にわが身に降りかかると考える方はそう多くないのではないかと思います。
実際、赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に緊急入院することになったご家族の多くは、「まさか自分が…」とおっしゃいます。「まさか自分が…」と夢にも考えてもいない人たちの「声」は、絶対に「声」になりません。なりようがないのです。
実は、新生児医療に限らず、赤ちゃんやお母さんたちを取り巻く問題には「声」になりにくい構造がたくさんあります。
昨年の今頃、子どもの保育園が決まらないお母さんが「保育園落ちた 日本死ね」とブログに書いたことがきっかけで、待機児童問題が大きな社会問題に発展したことは記憶に新しいと思います。
子どもが保育園に入れるかどうかは、当事者にとってはかなり短い期間で白黒がついてしまいます。入園できればそれでよし、しかし、入園できず時間が経過すれば、会社を辞めなければならなくなり、その一方で保育園を求めることは無くなるため、待機児童問題としては終わります。社会問題の当事者として、長期間にわたってその解決を求める力にはなりにくいという構造があるのです。
障がいのあるお子さんに関しても似たようなことがあります。障がいと言っても、その種類や程度はさまざまで、しかもお子さんの年齢によって必要な支援はどんどん変化していきます。
NICUを退院して間もない頃であれば、育児上のサポートがメーンとなりますが、お子さんが大きくなっていくと保育園の問題、療育の問題、就学の問題、就学後にもさまざまな問題が起きます。
さらには義務教育を過ぎたらどうするのか?と、当事者は一緒でも必要な支援や課題はどんどん変化します。当事者が、ある一つの支援の必要性を継続的に求めることができないという点では、同じような構造がここにもあるのです。
また、そもそも生後間もない赤ちゃんたちは何も言えません。最近、レストランや公共の場での母乳の授乳に関しての是非が、新聞紙上やネットで話題となりました。
この時の記事を読んでいると、赤ちゃんに授乳させたいお母さんと、それを不快に思う他者の二者間の問題のように書かれていました。しかし、もう一人の当事者であるはずの赤ちゃんの立場がすっぽりと抜け落ちてしまっていたのです。
例えば、電車の中での化粧の是非であれば、それは二者間の問題ですが、授乳問題の当事者はあくまで3人です。おなかを空かせて泣いている赤ちゃんの立場を考えずして議論されるべき問題ではないはずです。
それでは、どうすればこうした「声なき声」に耳を傾けることができるのでしょうか?
必要なのはきっと「想像力」なのではないかと思います。ただ、現実を知らなければ想像すらできません。想像するには、その前提として、この連載で述べてきたようなさまざまな問題や、これらに「声」になりようのない構造があることを知っておく必要があると思うのです。2年半前に始まったこの連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」のタイトルも、こうした思いから付けられたものです。
赤ちゃんやお母さんたちがどのような問題に直面し、困っているのか、より多くの方に思いをはせていただくことが結果的に優しい社会につながるのではないかと思います。これまでのご愛読に心より感謝いたします。

(文責 成育科 網塚 貴介)

(クリックすると東奥日報連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」のバックナンバーへリンクします)

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