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成育科ブログ

2016.10.20

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が37回目でした。今回はFamily centered careを取り上げてみました。

この連載の文字数は大体1500字ぐらいなのですが、一般の方を対象に書くことの難しさを再認識した回ともなりました。学会等であればFamily centered careがどんなものなのか、NICUに入院すると母子分離せざるを得ない、と言う共通認識の元で発表しますが、今回は特に「母子分離」の言葉を使えなかったのが辛いところでした。まずはご覧いただければと思います。

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以下、本文です。

赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入院すると、どうしても赤ちゃんとお母さんは離ればなれになってしまいます。ご家族、特にお母さんにとっては、通常の産後とは違う環境になるため、イメージしていた姿とのギャップを感じられることもしばしばです。
このことは、私たち医療者がつい「軽症だから」と考えがちな、ちょっとだけ早く小さめに生まれた早産児の赤ちゃんの場合でも例外ではありません。こうしたご家族の不安や葛藤に対して、新生児医療の現場では軽減のために様々な取り組みがされています。今回はそうした取り組みを紹介したいと思います。
かつて新生児医療では赤ちゃんの救命にのみ注力するあまり、赤ちゃんとご家族との関係に無頓着だった時期がありました。しかし、近年はその反省から、ご家族を赤ちゃんのケアの中心にしようという動きが活発で、これを「ファミリーセンタードケア(Family centered care)」と呼びます。
NICUに赤ちゃんが入院すると、ご家族は面会に通い、ある程度大きくなると退院指導を受けて自宅に帰るという流れがあります。確かに面会に来れば赤ちゃんに会うことはできますが、一方で治療中の赤ちゃんに対してご家族ができることは少なく、その場で時を過ごすことは無力感や将来への漠然とした不安、時には「どうしてこうなってしまったのだろう?」というような、ネガティブな気持ちに押し潰されそうになりがちです。
しかし同じ面会でも、ただ赤ちゃんを眺めるのではなく、ご家族でも可能なケアを行うことができればどうでしょうか? 全身状態の不安定な生後早期の急性期では難しくても、栄養を注入できる時期になれば母乳をゆっくり注入したり、もう少しすればおむつ交換もできるようになるかも知れません。
ご家族が行うことのできるケアの範囲が日々広がっていくことや、その過程で次第に赤ちゃんの変化を感じることができれば、ご家族も自分たちが「育っている」ことを実感できるのではないかと思うのです。
こうした取り組みは全国で広がりつつありますが、一方でそれを阻む要因も多々あります。
一つは、前回ご紹介したNICUにおける看護スタッフの人員配置不足です。ご家族にケアに参加してもらうにも、何でもやってみれば良いわけではなく、ケアに対するご家族の理解を深める必要がありますし、またそれぞれのご家族が次に何が可能か、今どの段階なのかも把握しておく必要があり、そのためにはやはり、それなりの人員が必要です。
また、もう一つの大きな要因はNICUの面積です。日本のNICUは非常に狭く、ご家族が赤ちゃんと一緒に過ごすにも、スペースが非常に足りないのが一般的です。この点に関しては、最新のNICUでは病室を個室化したり、ご家族のためのスペースを広く取る施設が増えています。
また、呼吸障害のない、ちょっとだけ早く生まれた早産の赤ちゃんで、もし赤ちゃんとお母さんが一緒に入院患者さんとしてケアできる病棟があれば、そもそも赤ちゃんとお母さんは離れなくて済むはずです。実は、海外の施設では母子をともに入院患者さんとしてケアできる施設がすでに存在します。
日本では、産科病棟とNICUが制度上も区分けされているので、こうした対応を取ることが難しいのが現状です。しかし、ファミリーセンタードケアの観点から、周産期医療体制を大枠から考え直さなければならない時期にさしかかっているのではないかとも考えています。

(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.09.15

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が36回目でした。今回は先月の 東奥日報連載35回目 「一人飲み」㊤~新生児医療現場の「悲鳴」 に続きGCUにおける赤ちゃんの「一人飲み」に関して、その背景を述べてみたいと思います。

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以下、本文です。

前回はNICU(新生児集中治療室)の回復期病床で、赤ちゃんが立てかけられた哺乳瓶を「ひとり」で哺乳する「一人飲み」の実態を紹介しました。「一人飲み」は看護師さんの人員配置の不備のため、多忙時にやむなく行われています。それではなぜ、看護師の配置の不備は解消されないのでしょうか?
NICUに入院しているのは小さな赤ちゃんです。看護師さんは医療的なケアだけでなく、哺乳やおしめ交換、着替えなど日常生活のケアも行います。つまり赤ちゃんを「預かる」託児行為をしているのです。しかし、保育所と違って、新生児病棟では一人の看護師が何人までの赤ちゃんを担当してよいという規則は定められていません。
昨年、全国の医療施設に行った調査によると、NICUの回復期病床における夜勤看護師一人あたりの受け持ち患者数は、全国平均で6・5人ほど。多いところでは10人以上の赤ちゃんを受け持っています。
連載12回目で、子どもが入院した時、「建前上」は親の付き添いが不要となっていても、現実には看護師一人あたりの担当患者が多いため、親の付き添いなしの入院が不可能となっている実態をお伝えしました。
これは小児病棟の場合の話で、親御さんが病室で子どもの横に寝泊まりしながら身の回りの世話をすることで、子どもたちの入院生活が成り立っています。
しかし、新生児病棟では基本的に病院側が赤ちゃんを預かっており、NICUはワンフロアに複数の保育器を並べて医者や看護師が頻繁に出入りする体制になっているため、家族が長時間付き添っていられるスペースがほとんどありません。そのため、小児病棟と同じ「看護師のマンパワー不足」という問題に対し、親の付き添いさえできない状況が生まれ、その「ほころび」こそが「一人飲み」と言えるのでしょう。
ここで同じく赤ちゃんを預かる保育所の状況を見てみましょう。
保育所は児童福祉法の児童福祉施設最低基準によって、例えば保育士1人に対し、1歳未満の乳児は3人までと法律で定められています。さらに同法の保育所保育指針には、生後6カ月未満の乳児の授乳は「抱いて微笑みかけたり、優しく言葉をかけたりしながら、ゆったりとした気持ちで行う」ともあります。
残念ながら「一人飲み」を行わざるを得ないような病院では、とてもそのようなことはできません。保育所と病院とではこれほどまでに法整備に違いがあります。
この違いはどこからくるのでしょうか?
それは待機児童の存在です。ご存じの通り、わが国では保育所に入所できない待機児童が大きな社会問題となっています。一方、病院はどうでしょうか。保育所における待機児童は、病院では「患者の受け入れ困難」にあたります。こちらは、全国で一人でも発生すれば大問題です。つまり医療の世界では「患者を受け入れることが最優先課題」という前提条件があるのです。
とは言え、患者さんを受け入れられれば赤ちゃんのケアの質がどうなっても良いわけがありません。全国の医療施設への調査でも、「一人飲み」をやめるためには「何らかの法整備が必要」との声が最多でした。
緊急の受け入れ体制はこれまで通り維持しながらも、一方で赤ちゃんのケアの質に関しても一定の法的基準が求められるべきなのではないかと個人的には考えているところです。

(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.08.18

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が35回目でした。今回は先月の「 『一人飲み』アンケート2015~日本周産期・新生児学会in富山 その5 」でもご紹介した、GCUにおける赤ちゃんの「一人飲み」をいよいよ取り上げてみました。この「一人飲み」に関しては以前から、と言うよりもこの連載をお引き受けした時からいずれ取り上げたいと心に決めていたトピックです。今回はまずこうした現実があることをご紹介した上で、来月の36回目には、その背景に関して何が問題なのかを解説したいと思っています。

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以下、本文です。

突然ですが、写真の赤ちゃんは何をしているところか分かりますか? ベッドに寝ている赤ちゃんが、立てかけられた哺乳瓶を「ひとり」でくわえていますよね? これは「一人飲み」と言って、NICU(新生児集中治療室)の中でも回復期病床にいる、集中治療が一段落した比較的軽症の赤ちゃんが哺乳しているところです。
このような「一人飲み」が実際の新生児医療現場で行われているとしたら、そして、ご自身のお子さんやお孫さんがNICUに入院していて、このような授乳をされているのを目撃したら、どのように思われるでしょうか?
この「一人飲み」に関しては、全国の新生児医療施設を対象とした調査が今から10年前の2006年に行われ、昨年2回目の調査も行われました。
06年には全国の施設のなんと過半数で、昨年の調査でも半数近くの施設で、特に多忙時に行われていることが明らかとなっています。幸い、本県で「一人飲み」を行っていると回答した施設はありませんでした。
NICUは大きく二つのセクションから構成されます。一つは急性期の重症患者を治療する狭い意味でのNICUで、ここでは看護師1人あたりの受け持ち患者が3人までと定められています。
もう一つは、先ほどご紹介した回復期病床で、こちらは赤ちゃんだからと言って特に看護師の配置が厳密に定められているわけではなく、成人と同じ一般病床の扱いとなっています。このため、特に夜勤帯に人手不足となる施設が多く、10年前の調査では、全国平均で一人の夜勤看護師が9~10人の赤ちゃんを担当していました。
昨年の調査では、平均で6・5人程度までに改善してきてはいますが、それでもかなり多忙です。また、近年のNICU不足のため、回復期病床の赤ちゃんの重症度が相対的に上がっているという背景もあります。調査でも、「一人飲み」をしなければならない理由として最も多かったのが、「回復期病床における看護師1人の受け持つ患者数が多すぎるから」でした。
急性期を過ぎ、全身状態が落ち着いているとは言っても、まだ入院が必要な赤ちゃんですから、こんなことをして大丈夫なのかと思われるでしょう。まさにその通りで、「一人飲み」を行っている施設の約4分の1でトラブルを経験しています。中には「チアノーゼ(低酸素血症のために顔色が悪くなること)になった」「哺乳瓶が外れていた」などの事例も報告されています。
一方、看護師さんたちも平気で「一人飲み」を行っているわけではありません。調査では「できることならこんなことはしたくない」「抱っこして飲ませてあげたい」「赤ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱい」という声が多数ありました。
あまりにも多忙で、看護師の配置を増やしてほしいと泣きながら病院に訴えても、診療報酬に直接結びつかない看護師の配置強化など全く取り合ってもらえず、結果的に看護師さんのモチベーションが下がって離職に至るような事例もあります。看護師の側にも、大きな心の傷を残しているようです。
こうした現状を目の当たりにして憤りを感じながらも、どうにもできないもどかしさが調査回答ににじみ出ていました。まさに現場の「悲鳴」と言えるでしょう。
「一人飲み」の最大の理由は、看護師さんの人員配置の不備にあります。それがなぜ解消されないのでしょうか? その理由は次回述べたいと思います。

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(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.07.28

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が34回目でした。 今回も前回・前々回に引き続いて、東奥日報明鏡欄に医療的ケア児のお母さんからの投稿が(2016年4月20日) の明鏡欄への投稿に関連して、前回ご紹介した横浜市の 能見台こどもクリニック の小林拓也先生が取り組まれている「メディカルデイケア」をどのようにしたら拡げることができるのか?に関して述べてみました。

実は、今回の原稿に関してはちょっとした裏話があります。

先日、青森市内で青森県小児科医会が開催されたのですが、そこで医会の会長である 河内小児科内科クリニック の河内暁一先生から小児在宅医療に関して少話題提供して欲しいとのお話しがあり、そこで横浜市の能見台こどもクリニック の小林拓也先生が取り組まれている「メディカルデイケア」に関して「今は青森県では補助がないのでおそらく難しいと思いますが仮にこのデイケア事業に対する収益が黒字化できるようになれば、参加して下さる先生はいらっしゃいますか?」と言う形でご紹介させていただきました。

すると、それからしばらくして、青森市内の開業の先生からお電話があり「もし収益面での心配がなくなるなら協力したい」とのご連絡が入りました。既に原稿締め切りは過ぎてはいましたが、それでもまだ修正可能なギリギリのタイミングでしたので、急きょ、この原稿中に「財政的問題さえ解決できればデイケアに協力したいと言う、県内のクリニックの先生もいらっしゃいます」との一文を加えることができました。

この一文を加えることができたことは、連載記事としても大きな意味があったと思いますし、また先日の大阪の議員さん達にも、ご協力いただけるクリニックの先生が実際にいらっしゃることをお示しすることができた点でもその意義は大きかったように思います。

いろんな意味で、人と人とが絶妙なタイミングでつながってリレーのようになった、個人的にはとても感慨深い回となりました。これを気に少しでも事態が好転していくことを願っています。

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以下、本文です。

前回は、横浜市の小児科診療所「能見台(のうけんだい)こどもクリニック」にある「メディカルデイケア」の施設を紹介しました。
この施設には、重症心身障害児のお子さんたちが日中預けられており、医療機関なので治療も可能で、体調を崩しやすい医療的ケア児の預け先として、とても優れています。しかし、医療的ケアを要する重症心身障害児のお母さんが、安心して働けるようになるための全ての答えになっているわけではありません。それはなぜでしょうか?
この施設の小林拓也院長先生に聞くと、「結果的に働けているお母さんはいるけれども、就労支援と銘打つのは個人のクリニックには荷が重すぎます」とのお返事でした。
この施設の医師は小林先生お一人なので、就労支援を銘打つと休むことさえできなくなります。実際にほとんど休みのない生活だそうで、裏を返すと母親の就労支援は、それだけハードルが高いと言えます。
そして、さらに重大な問題があります。
この施設には、これまでにも多くの見学者がおり、自施設でも取り入れようと試みた先生が何人もいたそうですが、多くが途中で断念されています。
理由は、国が現在定めているデイケアの報酬だけでは人件費を賄えず、赤字になってしまうからです。辛うじて続けられている施設でも、他の事業の黒字分で穴埋めしているのが実情です。小林先生の施設では、国の定める報酬に上乗せした補助を横浜市が出しているため、安定した運営ができています。つまり、行政からの支援なしに重症心身障害児のデイケア施設の維持は極めて困難なのです。実際に財政的問題さえ解決できればデイケアに協力したいという、県内のクリニックの先生もいらっしゃいます。
医療的ケアを要する重症心身障害児のお母さんが安心して働くためには、まず、デイケア施設への経済的支援が不可欠であること。そして、支援によって施設数の裾野を広げ、ある程度の規模を持ったネットワークを構築することが、お子さんの預け先の安定的供給に必要なのでしょう。
さらに、これまでの障害児への支援策は、家族の負担軽減を目的とはしていながら、「どこまで軽減できたか?」の評価もなければ、地域ごとの比較すら困難な状態にあります。障害児支援の充実度指標の一つとして、障害児の母親の就業率あるいは失業率が評価されるべきと考えます。
一方で、障害児・病児を持つ母親が働くことへの抵抗感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。子どもを育てるのは親の努め、子どもの具合が悪い時に母親がそばにいるのは当然。確かにそうかもしれませんが、そこで思考停止してしまっていないでしょうか?
「わが子には保育園や幼稚園という選択肢すらありません。仕事をすることは不可能になり、経済的に苦しくなります。医学は進歩しているのに、福祉や制度は見直されず古いまま。その負担は全て家族が背負う現状です。共働きで子育てをしたいです」(一部略)
先日の明鏡欄に投稿されたお母さんの言葉です。夜間に何度も痰の吸引を行い、続けて何時間も寝ることもできない生活をしているのでしょう。それでも働きたいと訴える、その覚悟は並大抵のことではありません。障害があっても家族そろって暮らしたいからこそ、在宅医療を選択しているのです。
その思いを「親の努め」と一蹴してよいのでしょうか? 昔ながらの価値観でお母さんたちを縛り付けるのは、もうやめるべきではないか? それが成熟した社会のあり方ではないかと思うのです。
現在、政府は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げています。障害児のお母さんの就労問題は、このスローガンの根幹に関わる問題でもあります。その解決に本腰を入れられるか否かが、「女性が輝く社会」の本気度を示す試金石となり得るのではないかと思います。

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(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.06.23

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が33回目でした。 今回は前回に引き続いて、東奥日報明鏡欄に医療的ケア児のお母さんからの投稿が(2016年4月20日) でもご紹介させていただいたこの明鏡欄への投稿に関連して、医療的ケア児への支援のあり方に関して述べてみました。

先日、横浜市の 能見台こどもクリニック の小林拓也先生が重症心身障害児の日中一時預かりをされている「メディカルデイケア」をご紹介しましたが( 6月8日 メディカルデイケアとは?~横浜・ケアハウス輝きの杜 )、今回の連載では小林先生の取り組みをご紹介させていただきました。

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以下、本文です。

 4月20日付の東奥日報夕刊明鏡欄に掲載された「医療的ケア」を要するお子さんの預け先がなく、お母さんが働けないという投稿を巡って、前回はその問題が持つ矛盾点を述べました。今回は解決策に関して述べてみたいと思います。
医療的ケアを要する重症心身障害児に対して、法に定められている支援としては、障害者総合支援法と児童福祉法の二つの法律に基づくものがあります。
この中で健常児における保育所の代わりとなり得る支援、つまり「託児」が可能な支援としては、障害者総合支援法では、短期入所の中で宿泊を伴わないデイケア(特定短期入所)があり、福祉型と医療型に分かれています。福祉型は看護師が一定のケアを行うことが可能ですが、医療型は医療機関が提供するサービスなので、人工呼吸管理などのより高度な医療的ケア対応が可能です。
一方、児童福祉法によるものとしては、未就学児の通園を行う児童発達支援と、障害児の学童保育に相当する放課後等デイサービスがありますが、いずれも医療的ケアを要する子どもの利用は困難なことが多いようです。
よって、医療的ケアを要する重症心身障害児を預かることのできるサービスとしては、デイケアとなります。中でも特に医療的ケアおよび医療そのものを提供するものは近年、「メディカルデイケア」と呼ばれるようになっています。
実は、医療的ケア児への対応の問題を解決すべく、15年以上も前から横浜市で小児科の開業クリニックが日中の預かり事業をされているとお聞きして、先日、院長の小林拓也先生を訪問し、施設を見学させていただきました。
この施設は「能見台(のうけんだい)こどもクリニック」という小児科診療所で、2階部分が「ケアハウス輝きの杜」というメディカルデイケアの施設となっています。年齢に関係なく20名まで、朝8時から夕方6時まで預かることができます。
施設内には重症心身障害児病棟と同じ状態のお子さんがたくさんいて、スタッフの方たちは、気管切開児の痰の吸引、胃ろうからの栄養注入、在宅酸素療法中でなおかつ体調を崩して痰がごろごろしているお子さんに吸入したりと、慌ただしくも懸命にケアをされていました。一見しただけでは通常の重症心身障害入所施設の中でも、むしろ重症のお子さんの病棟にしか見えず、まさかこれが日中一時預かりの施設とはとても思えないほどでした。
重症心身障害児は頻繁に体調を崩しますが、この施設であれば体調が悪いときでも、と言うよりも体調が悪いときだからこそ、治療も含めて利用できるという点がデイサービスと大きく異なる点です。制度上は、上述の障害者総合支援法によるデイケアと医療保険制度を組み合わせた形で運用されています。中には仕事を続けられているお母さんもいて、先日の明鏡欄への問いかけに対する一つの答えになり得ると感じました。
ただ、この施設が全ての答えになっているわけではありません。次回は、医療的ケアを要する重症心身障害児のお母さんたちが安心して働けるようになるにはどうしたらいいのか?という点を、さらに掘り下げてみたいと思います。

(文責 成育科 網塚 貴介)

ブログ更新情報

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NICUケアワークショップ2017 in Korea その3

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