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成育科ブログ

2016.07.20

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さて学会最終日のお昼はいよいよランチョンセミナーです。今回のランチョンセミナーの主題は「母児の出会い、愛着形成を産科· 新生児科で考えるFamily Integrated Care」で、「オランダにおけるFamily Integrated Careの実践例と日本における可能性」と題してお話しさせていただくことになりました。お話しする内容は、 5月にオランダの病院を見学 させていただいた内容が主になります。
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会場にはでかでかとセミナーが掲示されていました。
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会場は今回のメインホールで、かつてないほど広い会場でした。
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さあいよいよ始まります。
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まず、 昨年の信州フォーラムでも発表させていただいた当院における「直母外出」の取り組みを紹介させていただいた上で、5月の連休に見学させていただいたオランダ・アムステルダムにある OLVG(Onze Lieve Vrouwe Gasthuis)病院 の周産期センターである「 Anna PavilLIon 」の取り組みを中心にお話しさせていただきました。

この施設は、日本で言うところの地域周産期センターに相当する施設で、新生児は在胎32週以上の赤ちゃんを対象に診療されています。病床数は53床とありますが、この施設では産科と新生児科が一体化して診療しているのが特徴で、全て母児同室が前提となっているので、実質上はこの倍程度の診療規模の施設と考えて良さそうです。
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Family Integrated Careは本来的な意味合いとしては、ご家族がケアの主体者として治療方針決定にまで参加する概念を含みますが、この施設ではさらに「産科と新生児科がIntegrate(統合)」されているのが特徴です。この方針の下、分娩から入院に至るまでの全過程において母子は一時も離れることなく(母子分離の回避)、安心して親子の絆を育むことができています。
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周産期センターは3種類の病室から構成されています。13室の新生児室は、いわゆる個室化されたNICUで、入院中の赤ちゃんとご家族が常に一緒に過ごすことができるようになっています。Small Care Roomと言うのは、妊婦さんや出産後のお母さんが入院するためのお部屋です。そしてこの施設で最も特徴的と言えるのがLarge Care Roomです。このお部屋では入院中のお母さんと入院中の赤ちゃんが一緒に入院することができるようになっています。
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このスライドにもあるように、母子のどちらか、あるいは両方が高度な医療を要する状態だったとしても決して母子が離ればなれになることはありません。
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それを支えているのが、病棟設計とともに重要なスタッフ教育です。産科・新生児科のスタッフはそれぞれ相互に各9ヶ月間の研修期間を要し、産科スタッフは新生児科の、新生児科のスタッフは産科のケアに関する研修を行うようになっています。
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こうした柔軟な対応が可能な背景には、オランダと日本におけるケアに関する考え方の違いがあるように思います。オランダではこうしたケアに対する診療報酬はケア行為自体にひも付けられているのに対して、日本では「病室」と言う縛りの中で診療報酬が設定されている点に大きな違いがあります。つまり日本では産科と新生児科の間に制度上の「壁」ができてしまっており、このことがNICUに入院した赤ちゃんが母子分離をやむなくさせられてしまう元凶となっていると考えています。
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制度上から言えば、それぞれの病棟、すなわち産科病棟あるいはMFICUに入院しているお母さんと、NICU・GCUに入院している赤ちゃんは、厳密に言えば、一緒にいるどころか互いに会うことすら制度上の前提にはなく、そこで互いが一緒にいようとすることは、あたかも会うことの許されない二人が「逢い引き」「密会」するかのようでもあります。しかし、本来的には母子にはいかなる時も一緒にいる権利があるはずで、それは「 子どもの権利条約 」にも明記されている点でもあります。
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私たち周産期医療に関わるものは、現在はこうした制約の中で診療せざるを得ない状況にはありますが、当院で取り組んできている「直母外出」や、その他にも様々な施設で知恵を出し合い、少しでも赤ちゃんとそのご家族が一緒にいられる環境作り・施設設計のきっかけとなってくれればと良いなと言う思いを今回のランチョンセミナーでは述べさせていただきました。
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(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.07.08

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この度、「 みやぎ母乳育児をすすめる会 」から「 初乳から卒乳まで~みんなが安心して母乳育児をすすめるために~ 」という小冊子が刊行されました。
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この冊子刊行に際しては東北母乳の会のメンバーが分担執筆し「早産児・低出生体重児と母乳育児」の章を担当させていただきました。
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ちなみに、この章の冒頭にある写真は、日本医師会と読売新聞社が主催の 第17回「生命(いのち)を見つめる」フォトコンテスト で審査員特別賞を受賞された「 ゆびきりげんまん 」(山田英樹さん撮影)と言う作品で、山田さんのお子さんが当院NICUに入院されていた当時に撮影されたお写真です。

一般のお母さん向けに書かれてはいますが、内容的にはかなり充実した一冊となっています。お値段もかなりお手頃ですので、是非、ご覧いただければと思います。ご注文は みやぎ母乳育児をすすめる会 までお問い合わせいただければ注文可能とのことです。
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(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.01.21

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が28回目でした。今回は母乳特集のまとめとして、前回の最後に「母乳育児支援で何が一番大切なのか? それは単に母乳率を上げることではなく、母乳で赤ちゃんを育てたいと思っているお母さんが最大限の支援を受けられ、最終的にどんな結果になろうと自信を持って赤ちゃんを育て続けることができるような支援なのではないかと思います。では、このような支援はどうすれば実現できるのでしょうか?」と書いた答えとして私見を述べてみました。

なお、今回の投稿掲載に際しましては、母乳育児の先進県である富山県厚生部 健康課 母子・歯科保健係のご担当の方にシンボルマークの使用に関してご許可いただきました。この場をおかりして御礼申し上げます。

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以下、本文です。

本連載の20回目から8回にわたって母乳育児に関して述べてきました。今回はその総括をしたいと思います。

母乳育児支援で何が一番大切なのか? それは単に母乳率を上げることではなく、母乳で赤ちゃんを育てたいと思っているお母さんが最大限の支援を受けながらも、最終的にどんな結果になろうと自信を持って赤ちゃんを育て続けることができるような支援である─と前回述べました。

では、それはどのようにしたら実現できるのでしょうか?

お母さんたちへの精神的なサポートまでも含めた支援方法に関しては、例えば、NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会がすでにプログラムを確立していて、セミナーを開催しています。

本来であれば、母乳育児支援に関わるスタッフに対してこうした教育プログラムが一般化されれば、現状を大きく改善させることができるでしょう。つまり母乳育児の支援者にも支援と教育が必要なのです。

その実現には行政レベルでのサポートが必要ですが、すでに実例はあります。富山県では母乳育児推進事業が県の施策の一環として行われており、母乳育児に関わるスタッフへの研修や、社会に対しての啓蒙活動がすでに30年も前から実践されています。

一方で、母乳育児に限らず、妊娠・出産・子育てに関わる問題は極めて個人的でデリケートな問題を含みます。ですので、少子化対策も含め、社会あるいは行政としてあまり深入りしたくないという気持ちは理解できなくはありません。確かに、何もしなければ非難されることもなく無難なのかも知れません。

しかし、これまで通り何もしなければ、母乳育児に熱心でない施設では、人工乳を生後早期からどんどん飲ませて母乳育児どころではなく、一方で母乳育児に熱心な施設でも母乳育児がうまくいかなかったお母さんがご自身を責めたりと、ずっと昔から続いてきた悲劇がこれからも延々と繰り返されるわけです。

母乳の特集の初回に「母乳がなかなか出ない母親もいるのに追い詰めることになりはしないのか?」という言葉に隠された母乳育児支援のタブー視こそが、母乳育児がうまくいかずに傷つくお母さんを増やしていると述べました。一見思いやりがありそうな言葉の陰に隠れて何もしないことこそが、悲劇がなくならない元凶なのではないかとさえ思います。

最大の悲劇は悪人の暴力ではなく、善意の人の沈黙と無関心である

マーティン・ルーサーキング牧師によるこの言葉がふと頭をよぎります。母乳育児の問題に限らず、「善意の人の沈黙と無関心こそが悲劇を生み出している」という現実が、この連載で紹介している赤ちゃんを巡る環境には数えきれないほど存在します。

妊娠・出産・育児は、赤ちゃんがいる家庭だけのものと思われがちです。でも、職場の部下や同僚、自身のお子さんたちや親戚まで範囲を広げると、全く関係ないという方はそんなに多くはないのではないでしょうか?

赤ちゃんのいる家庭ではどのようにして子育てをしているのか。無関心な傍観者ではなく、より身近な存在として、ほんの少しでも思いをはせてみていただきたいと思うのです。

2015.12.24

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が27回目でした。今回は「真の母乳育児支援とは?」と言うタイトルで、お母さんへの精神的支援の必要性に関して述べてみました。

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以下、本文です。

以前、正しい情報と支援があれば、ほとんどのお母さんは母乳で赤ちゃんを育てられると言われていることを述べました。この「ほとんど」とは、実際にはどの程度の割合なのでしょうか?

母乳育児に力を入れていて、WHO・ユニセフから「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」に認定されている施設は、本県内では弘前市の健生病院と国立病院機構弘前病院の2施設あります。しかし、健康な赤ちゃんがお母さんのおっぱいだけで退院できる割合は、BFH認定施設でも良くてせいぜい9割程度、一般的に8割を超えていればかなり高率と言えます。

ちなみに、県病で出生体重1000g未満で生まれる超低出生体重児の救命率は現在95%を超えます。それでも「ほとんど助かりますよ」とはとても言えません。一方の母乳率は、8割程度で合格レベルなのですから、「ほとんどのお母さんが母乳育児できる」というのは言いすぎのような気もします。

確かに母乳育児の確立にはお母さんたちを励まし、モチベーションを高める必要があります。しかし、イメージしていた母乳育児とは裏腹の結果になってしまえば、お母さんたちが喪失感・敗北感を感じたとしても不思議ではありません。

これはちょうど受験生が合格をイメージして頑張ったのに不合格になってしまった時と似ています。ここで重要なのは、仮に当初のイメージとは異なった結果となったとしても、「やれるだけのことはやった」と思えるなど、気持ちが前に向くような支援なのではないかと思うのです。つまり、母乳育児支援とは単に母乳率が高くなることを目指すのではなく、仮にうまく行かなかったとしても、しっかりと精神的なサポートやフォローも含んでのことでなければならないはずです。

母乳育児と言うと、「母乳教」とか「狂信的」といった言葉で揶揄されることがありますが、それにはそう言われるだけの、何らかの至らなさがあるのではないかと思います。

「頑張ればみんなうまく行きますよ」と言って、うまく行かなかった時のサポートがなければ、それは母乳育児を支援している側も「母乳が大事」とは言いながら、実は「できなかったらそれはそれで仕方ない」という気持ちが働いているのではないか? そんな気さえしてしまいます。

支援もなく、生後間もなくから人工乳を飲ませれば母乳率など半分にも満たないことでしょう。母乳育児がうまく行かなかった時、その最も大きな原因はお母さん自身ではありません。分娩施設の支援の影響がはるかに大きいのは事実で、支援する側に原因があると言っても過言ではありません。

そして、お母さんがご自身を責めてしまう気持ちになったのだとしたら、それもまた施設としての精神的支援が不十分であったことが原因と言って良いでしょう。決してお母さんご自身を責めることになってはならないと思うのです。

人工栄養だって立派な育児なのだ」と、その後の育児を前向きにとらえられることの方が、母乳育児の確立よりもはるかに重要なのではないでしょうか?

母乳育児支援で何が一番大切なのか? それは単に母乳率を上げることではなく、母乳で赤ちゃんを育てたいと思っているお母さんが最大限の支援を受けられ、最終的にどんな結果になろうと自信を持って赤ちゃんを育て続けることができるような支援なのではないかと思います。

では、このような支援はどうすれば実現できるのでしょうか? それはまた次回お話ししたいと思います。

2015.12.10

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が26回目でした。これまで母乳が大切とばかり述べてきましたが、これでは人工乳の「立場」がないので、今回は視点を変えて人工乳の「立場」からその必要性に関して述べてみました。

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以下、本文です。

これまで母乳が大切とばかり述べてきましたが、これでは人工乳の「立場」がないので、今回は視点を変えて人工乳の「立場」からその必要性に関して述べてみたいと思います。

結論から言えば、人工乳とは一つの「ツール」なのではないかと私は考えています。

昔、赤ちゃんのお風呂上がりに湯冷ましを飲ませるよう指導していた時代がありました。この指導はかなり徹底されていたようで、いまだに多くのお母さんから「お風呂上がりの湯冷ましはいらないんですか?」と聞かれます。しかし、その答えは「ノー」です。

昔の人工乳は濃度がやや濃かったため、赤ちゃんには適宜白湯を与える必要がありました。そのため、このような指導がされていたのです。

母乳であれば、以前から白湯は必要ありませんでした。人工乳で育てられている赤ちゃんも、今は必要ありません。
人工乳は母乳を目標に改良され続け、それでも遠く追いついてはいないものの、日進月歩の進化を続けています。改良自体は素晴らしいことです。

問題はその使い方にあります。私は、人工乳はあくまで必要な時に加えられるべきものであると考えています。
母乳は出産直後からどんどん分泌されるものではなく、最初の数日間はホルモンの影響でなかなか増えてこないことがしばしばです。

赤ちゃんの側もそれが前提になっていて、最初の数日間、ほとんど母乳が飲めなかったとしても、水分と栄養が維持されるようになっています。なので、「赤ちゃんは水筒とお弁当を持って生まれてくる」と言われます。

しかし、これはすべての赤ちゃんに当てはまるわけではありません。

例えば、早産児や体重が少なめの赤ちゃんの場合、完全母乳にこだわっていると低血糖になりやすく、点滴が必要になれば入院せざるを得ません。赤ちゃんが入院すると通常はお母さんと離ればなれになりますので、結果として母乳の割合も下がってしまいます。むしろ、人工乳を加えて赤ちゃんの血糖値を保ちながら、お母さんと一緒にいてもらった方が母乳分泌も増え、母乳育児は確立しやすくなるのです。

よく泣く赤ちゃんの場合に人工乳が必要になることもあります。激しく泣くと、体から水分がどんどん水蒸気として出て行き、体重が減ります。赤ちゃんが泣くのに理由がある場合は、原因を取り除けることもあるので、すぐに人工乳を足す判断が正しいとは限りませんが、お母さんの母乳分泌が追いつかない時期にはやむを得ない場合もあります。

これらはあくまでいくつかの例に過ぎませんが、必要な時に必要最低限の人工乳を加えることは決して悪いことではありません。

よく「完全母乳」という言葉が使われます。そもそも、この言葉自体に問題があるようにも思います。

「完全母乳」と言うと、どうしても母乳以外のもの(=人工乳)を一度も飲ませないと考えがちです。そうではなく、普通に「母乳育児」で良いのではないでしょうか?

1回でも人工乳を飲ませてしまったら「負け」のように思う必要は全くありません。確かに厳密に言えば、人工乳は牛由来なので、異種タンパクによるアレルギーのリスクはありますが、そのリスクよりも、必要な時に人工乳を加えないことによる脱水や低血糖の方が、ずっとリスクとしては高いのです。

母乳育児の支援者は、リスクが高いのはどちらなのか常に冷静に見極める必要があります。ここを取り違って、一口も人工乳を飲ませないことを重視するような指導がされていれば、それは「こだわり」と言われても仕方がないでしょう。

重要なのは、「ツール」である人工乳を正しく使いこなすことなのではないかと考えています。

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