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成育科ブログ

2015.05.22

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東奥日報夕刊の連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」は今週月曜日が16回目でした。今回は早産で早生まれによる「飛び級」問題に関して述べてみました。

第16回目 (Custom)

以下、連載本文です。

県病NICU(新生児集中治療室)卒業生の中にも、この春から小学校に入学したお子さんがたくさんいます。小さく生まれたお子さんたちの就学について、いつも頭を悩ませられるのが「早生まれ」の問題です。もっと正確に言えば、「早産出生により年度をまたいでしまったため、本来よりも1年早く就学しなければならなくなった」お子さんたちのことです。

「そんなにたくさんはいないのでは?」と思われるかも知れませんが、出生体重が1000㌘未満の超低出生体重児のお子さんたちは、予定日よりも数か月は早く生まれてくるので、年度をまたいで生まれることは決して珍しくありません。

過去の県病入院例で調べてみると、超低出生体重児全体の約28%のお子さんが年度をまたいだ、いわゆる「飛び級」となっていました。年度をまたいだ早生まれは超低出生体重児に限らず、ちょっとだけ早く生まれたお子さんたちでも多かれ少なかれ存在します。

仮に順調に発達していても、本来は1学年下で入学するはずだったお子さんたちです。実はわが家の娘も、年度末近くの早生まれで体格も小さめで、ランドセルに背負われているような後ろ姿を毎日はらはらしながら眺めていたものです。ましてや早産で生まれ、しかも本来よりも1学年早く新入学を迎えたら、ご家族の心配はいかほどかと思います。

日本には、小学校の入学を遅らせる「就学猶予」と呼ばれる制度があります。これは「病弱その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合に就学を猶予」する制度で、学校教育法第18条に規定されています。かつては、障害や経済的事情で学校に通えない子供たちを対象にした制度でしたが、特別支援教育の充実によりその対象者を減らしてきました。

低出生体重児もその対象になり得るのですが、一方でいくつかの問題もあります。

例えば、保育所では本来就学すべき年齢のお子さんを預かることはできないので、就学猶予しても適した集団生活の場の確保が難しい場合があり得ます。就学前の1年間、どこにも行き場のない「自宅浪人」なのでは発達上も好ましくありません。

全国的にみると、就学猶予の実績はないわけではありません。しかし、その実数は決して多くなく、青森県内での実績もほとんどありません。仮に就学猶予したとして、そのことが就学後に何らかの差別やその他の不利益をもたらす可能性を就学前の段階で見通すこともまた困難ですので、安易にお勧めもできないとも考えています。

こうした事情もあり、筆者がこれまで担当したお子さんたちで実際に就学猶予をしたお子さんはいません。今後もよほどご両親の希望と諸条件がそろわない限り、就学猶予に向けて動くことはないのかなと思います。

「飛び級」問題について、現状ではこれと言った有効な打開策はなく、それぞれのお子さんができるだけ安心して就学できるよう、例えば定期的に発達の評価を行い、その中でその子の得意なこと、不得意なことを明らかにしていきながら、必要な支援や就学準備のお手伝いをしていくしかないと考えています。

元はと言えば、社会制度が生み出した問題なのですから、本来は制度が変わることで解決されるべきではないかとも思います。例えば出生証明書には赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいた期間である「妊娠週数」の記載欄があります。出生証明書は公文書ですので、この記載事項を元に出産予定日通りの学年でも問題なく就学できるような法整備がなされないものか?と日々の診療の中で感じているところです。

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