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成育科ブログ

2016.04.21

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が31回目でした。
今回は先月に続き新型出生前検査」に関して述べてみました。

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以下、本文です。

今回は新型出生前検査の問題点に関して述べてみたいと思います。この検査の導入で最も懸念されるのは「命の選別につながるのではないか?」という点かと思います。確かにこうした懸念を裏付けるように、この検査で陽性と判定された妊婦さんの多くが結果として中絶を選択されているという事実があります。
出生前検査に対する考え方は個々人によってかなり異なり、きわめて倫理的な問題なので限られた字数内で述べるのは難しいのですが、考え落としてはいけないのが、こうした技術はすでに開発されてしまっているという点です。この検査法の是非を巡る議論はこの事実を踏まえた上で行わなければなりません。
この検査は妊婦さんの血液だけで検査が可能ですので、仮に日本でこの検査を禁止したとしても、検査を行っている海外の企業へ妊婦さんが直接血液を郵送してしまえば防ぎようがありません。出生前診断には、妊婦さんに対して正確な医学情報の提供と、心理的・社会的支援を行うための遺伝カウンセリングが不可欠です。検査法に対する知識が十分でない状態で妊婦さんが検査を受ければ、結果を冷静に判断できない可能性が高くなります。つまりこの検査を一律に禁止することは、結果的にこうした支援を受けられない妊婦さんを発生させる危険性があります。それであれば、国内で一定のルールを作り、それに沿ったサポート体制のある施設に限定して進めるというのが現実的ではないか―というのが現在の考え方です。見方を変えれば、あらゆる出生前診断は遺伝カウンセリングのできない施設で行われるべきではないとも言えます。ただし、そうした体制が整っている施設数が少ないことも課題の一つとなっています。
また、この検査の守備範囲を知っておく必要もあります。検査対象はあくまで21、18、13トリソミーの三つの染色体異常のみです。三つを合わせても全染色体異常発生率の半分強というところですので、当然ながら全ての染色体異常の発生が分かるものではありません。染色体異常を伴わない先天性の症候群も数多く存在します。
高齢妊娠出産では早産その他の合併症の発生率も高くなりますし、生まれてくる赤ちゃんに障がいが発生する要因はほかにも山ほどあります。つまり、この検査で陰性となったからといっても、それは生まれてきた赤ちゃんの障がいの原因となるごくごく一部が否定(正確には可能性がきわめて低いと)されたにすぎないということは知っておく必要があると思います。
ただ、一方で検査を受ける方たちの心情を理解できる部分もあります。これまでも述べてきたように健常な赤ちゃんを持ったお母さんたちでさえ、経済的理由や仕事との両立で子育てが困難な今のこの日本社会です。もし、生まれてきた赤ちゃんに何か障がいがあったらどうなってしまうのだろう?という漠然とした不安を感じたとしても何の不思議もありません。
今の世の中は子育てをしていくという点において「余裕」が全くなくなっているのだと感じます。そもそも赤ちゃんが生まれるということは、何らかの障がいがある可能性も一緒に引き受けることにほかなりません。しかし、この余裕のなさが「可能性」を「リスク」と感じさせるのでしょう。
倫理的問題というのは、実は社会的あるいは経済的背景と切り離せないものだと思います。こうした出生前検査が結果的に中絶の増加につながっているのだとしたら、問題の根源はこの検査法が開発されたこと自体より、今の社会が「倫理的」にも問題のある段階にまで陥っていることを鏡のように映し出しているだけのような気がしてなりません。この新たな検査法の是非を問うのであれば、背景にある子育てを取り巻く社会のあり方も一緒に議論する必要があるのではないでしょうか?

(文責 成育科 網塚 貴介)

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