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成育科ブログ

2019.12.24

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11月23日(土)の船戸先生による生命倫理のご講演の前座的にあおもり母乳の会学習会で「少子化対策に欠けていた視点とその処方箋」と題してお話しさせていただきました。この内容は6月のあきた母乳育児をささえる会学習会で2時間ほどお話しさせていただいた内容を半分ぐらいに圧縮した感じになりました。

今日、出生数86万人に急減、初の90万人割れ 19年推計と言うニュースが飛び込んできたところでもありますので、そろそろここで先日の内容をまとめてアップしておきたいと思います。まずは当日のスライドの抜粋を一気にアップしてしまいます。きっと過去最多の枚数かと思います。

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まずは日本の総出生数と合計特殊出生率の推移から。このグラフが将来予測をする上での全ての「鍵」となります。
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合計特殊出生率は「加速度」みたいなもので、夫婦2人で子どもが2名でほぼ人口が均衡する水準である人口置換水準を大幅に割り込む状態が続くと、出生数減少・総人口の減少もどんどん勢いが増していくことになります。
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◆小括1
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次に少子化進行の社会的・経済的背景に関して少しまとめてみました。
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本来であれば第3次ベビーブームの親世代となるはずだった団塊ジュニアからそれに続く就職氷河期と、この世代はおそらくは子育て以前に家庭を持つどころではなかった人たちがかなりの割合に上ったと言うことなのでしょう。
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日本は女性の労働力率がM字型であることが知られていますが、この「鍋の底」が近年どんどん浅くなっており、これが「女性の社会進出」と捉えられているようです。
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しかし、その内実を雇用形態で分けてみると、M字カーブの「鍋の底」を浅くしているのは出産を過ぎてからの非正規雇用の増加によって支えられていることが分かります。一方、正規雇用は一括雇用の段階でいったん上昇しますが、その後は下降線にあり、これは妊娠・出産・子育て期を経て、どんどん正規雇用から脱落している結果を見ているのだと思います。
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◆小括2
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次に、育児と仕事の両立で立ちはだかる壁に関して。
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医療的ケア児は近年どんどん増加中で、そのお母さん達が仕事を続けるのが困難な様子は日常的に目にしています。
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以前、地元紙である東奥日報で連載をしていた頃、「東奥日報連載14回目 子の障がいと母の就労」と言うタイトルで紹介したことがあります。
「この子を育てながら私は働き続けることができるのでしょうか?」
この問いに答えることができずして少子化問題を語ることはできないのではないかと思います。
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入院すると親の付き添いを余儀なくされる場面は多々あります。必要な部分はあるとしても、長期入院の場合など、親への負担があまりにも過度な場合も多々あります。なにより、親の付き添いが「なかったこと」になっていること自体が問題と考えています。
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保育園問題もなかなか難しい問題です。早産児など、NICUから退院して間もないようなお子さんを保育園に預けたいと相談されることは度々あります。
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一方、子どものことで仕事が継続できず退職してしまった場合の試算がこちらになります。母親が仕事を続けられないことは、今の共働き時代では世帯としての経済問題となってしまいますし、これがシングルマザーでは一気に貧困問題にまで陥ってしまいます。
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以上をまとめると、結局のところ、子どもが増えない最大の原因は子育て世代を取り巻く「不安定さ」になるように考えています。
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そして、少子化対策していると言いながら、実のところは子どものことで困っていても全然助けてくれないと言うのが少子化が止まらない最大の原因なのではないかと考えています。
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結局のところ、現代の日本社会で子どもを持とうとすると、それはリスクになってしまっていて、言い方を変えると、少子化の進行とは子育て世代による人生のリスクマネジメントの結果なのではないかと考えています。
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ここで少し日本における雇用環境に関してまとめておきます。
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日本の雇用形態は主にメンバーシップ型雇用が多いと言われています。
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しかし、この雇用形態で子育て中の女性が同じトラックで競争しようとすると、もはや女性の方は障害物競走みたいになってしまっているので、これはやる気もなくなるのは当然でしょう。
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空間的・時間的に無制限もしくはプライベートを排除して働けることを「能力」に置き換えて評価される社会であるがゆえに、子育て中の女性は本来の能力を問われることなくその競争からどんどん退場させられ、結果として男性中心の片肺飛行になっているのがこれまでの日本社会と言えるのではないかと思います。
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かくして、様々な女性のキャリアは、今話題の「食品ロス」さながらに無駄に棄てられてしまっていると言うように言えるのではないでしょうか?
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昔から「銃後の守り」という言葉があります。一家の中に家庭を守る存在(=かつての専業主婦)がいてこそ、夫はこれもかつての高度成長期に「24時間働けますか?」とばかりにモーレツ社員として働いていた時代がありましたが、とっくの昔に共働き世代が逆転してしまっている今、夫も妻も一緒に同じように働くことにはそもそも無理があるように思います。
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本来であれば、人が生きて行く中での生老病死には必ず「ケア」が必要となります。男女問わず、この総量はリスクも含めれば全ての人がスタート時点では同じのはずです。この「ケア」に対するコストがこれまでの経済政策の中でパラメータとして見積もられなかったことこそが、経済成長を目指しながら、結果として少子化から経済縮小を余儀なくされる未来を迎えることになってしまった原因なのではないかと思います。
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以上を一言で言ってしまうとこんな感じになるかと思います。
「男は仕事、女は家庭」
「子どもは家族の責任で育てる」
言えば言うほど子どもも人口も減っていく!
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ただ、そうは言うものの「子どもの権利」はやはり最優先に考える必要があります。
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そう言いながら、入院中の看護体制とか保育園の基準とか、その辺はまるで無頓着なところもあったりします。これもまた「子どもは親が育てるもの」と言う哲学が諸制度の根底に流れているからなのでしょう。
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それではこれからどのようにしていけばいいのでしょうか?
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その大前提となるのが「子どもを社会で育てる」と言う考え方に変えていくと言うことに尽きるように思います。「子どもを社会で育てる」とは以下の3つあるように思います。
1)子育てで母親や家族を困らせない仕組み作り
2)育児を母親だけに押しつけない社会の仕組み作り
3)子育て上で生じた不利益を親に負わせないルール作り
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1)の母親や家族を困らせない仕組み作りのためには、まず考え方として、子どもを持てばそれは当然いろんなことが起こりうるわけなので、子育てにおいては誰もがある日突然弱者になり得ると言うこと、を前提とする必要があると思います。その前提の上で、「誰も子どものことで困らせない」仕組み、それはきっと究極的には「保険」のような仕組みが必要なのではないかと考えています。
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育児を母親だけに押しつけないためには、父親が家庭で戦力となる必要があります。これは、一つの考え方として、例えば、病院は看護師さんなど女性が働く最たる場ではないかと思いますし、医師の世界で言えば、小児科・産婦人科などは近年女性医師がどんどん増えています。ここで、夫が企業勤務、妻が看護師とします。夫は長時間労働で家庭のことをする暇もなく日々仕事に明け暮れる、方や妻の看護師は家事育児の負担をせざるを得ない。ここで個別ではなくマクロの視点に立ってみると、組織として社員に長時間労働をさせている企業は、産休・育休を取得する職員がたくさんいる組織に比べて、子育てに関する負担が組織単位で少なくて済むことになってしまいます。しかし、「子どもを社会で育てる」と言う考え方に立てば、長時間労働をさせている企業は社会全体に対して子育て負担と言う点で「ただ乗り(フリーライド)」していると言えるかと思います。こうした考え方を、例えば税制などに取り入れたりすることで、結果として男女が等しく働けるようになる社会が形成されるのではないかと期待しています。
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さらに、子育てしていく上でどうしても親でなければならない局面h当然あるはずなので、その時には、仮にそこで休んでも子育てに関する休職に関して不利益を与えない仕組みと言うのも今後検討されるべき課題なのではないかと考えています。
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そして、部下が妊娠したけどどうしよう、ではなく、素直に皆で心から祝福できる社会こそが正常な姿なのではないかと思います。
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(文責 成育科 網塚 貴介)

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2019.12.15

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12月12日(木)には山梨周産期医療懇話会で山梨県立中央病院にお招きいただきました。実は山梨県は人生初上陸でした。2014年に信州フォーラムの帰りに大雪に見舞われ、長野県の大町市から車で東京を目指して遭難しかけたことを書きましたが(2014年2月 信州フォーラム旅日記 番外編)、その時に到達できなかったのが山梨県でした。
甲府に向かう特急の車中から富士山山頂のあたりが顔をのぞかせていました。もうほぼ夕暮れでしたので山頂部分だけほのかに赤みが差していました。
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今回お招きいただいたのは山梨県立中央病院の内藤先生で、今年6月に自治医科大学で開催されたハイリスク児フォローアップ研究会で、たまたま同じグループになったのがご縁で意気投合して今回のお話となりました。
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今回は「新生児医療のその後を支える」と題してお話しさせていただきました。
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最初に青森県の周産期医療のこれまでをご紹介した上で、超低出生体重児のほとんどが救命されるようになって一方で、様々な後遺症を持ったり、後遺症と言えるかは別として様々な支援を要するお子さんがたくさんいる中で、それは医療的ケア児も含めて、どのように支えて行くのかをあれこれお話しさせていただきました。

特に最近、思うのが「Intact Survival」とは?と言う点です。
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今回の鹿児島の学会のメインテーマも「Intact Survival」で、この言葉はこれまで新生児医療に関わる全ての者にとっての合い言葉のようなものなのではないかと思います。しかし、退院後の支援をしていく中で、何が「Intact Survival」で何が「Intact Survival」ではないのかの線引きがもはや困難になっているような気がしています。
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私たちは「Intact Survivalか否か?」を心のどこかで切り分けようとしていたのではないか?そんな気がしてきています。
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脳室内出血やPVLがなければIntact Survivalなのか?1歳半ぐらいで立って歩いて喋ることができればIntact Survivalなのか?満3歳の新版k式発達検査でDQ85以上あればIntact Survivalなのか?そんなことを自問自答してきました。
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そこで辿り着いてのが、従来の「Intact Survival=健常児」と「障害児」は分離が困難であり、両者には「連続性」があるのではないか?「Intact Survival」は成長の結果としてはじめて実現されるものであり、「Intact Survival」の実現には「適切な時期」に「適切な環境(療育・支援)」が必要だと言うことを述べさせていただきました。
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そして、このことを足がかりにして、医療的ケア児支援まで考えを拡げると、医療的ケア児支援こそがおそらくはNICU退院児支援の最難題であり、その支援体制構築が、おそらくはその他のお子さん達への支援にもつながるのではないかと言うのが最近考えています。本当はこの間に医療的ケア児支援構築のための家庭がごっそりあるのですが、これはまた別の機会にご紹介したいと思います。
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懇話会が終わり、山梨県立中央病院を後にします。
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懇親会での集合写真。手に持っているのは、今回記念にいただいた甲府の伝統工芸である「印伝」による名刺入れです。
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とても高級な革細工で、これまで持っていたアルミケースの名刺入れとは比較になりません(^^;)
実は、ホテルがこの印伝の本店と近かったので、早速お財布も買ってきました。こちらは根本先生の名刺入れとおそろいの柄にしました。
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翌朝はその後に武田信玄ゆかりの武田神社にお参りしてきました。
内藤先生、根本先生、山梨県の皆さん、ありがとうございました。
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(文責 成育科 網塚 貴介)

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