2014.05.23
肺リクルートメント効果からみた人工呼吸器の機能を前回取り上げましたが、VG(Volume Guarantee)が入っていないことを意外に思われた方もいらっしゃるかも知れません。今回は前回、あえて外したこのVGの位置づけをかなり個人的な考え方になりますが述べてみたいと思います。
VG は従圧式換気、時間サイクル式換気、定常流式換気および従量式換気の利点を併せ持った複合的換気様式で,1 回換気量(tidal volume;VT)を指標にした従圧式換気です.VT が設定された1 回換気量となるように、あらかじめ設定された換気圧上限の範囲内で換気圧を自動調整しVT の安定化を図ります。
この説明だけを聞けばとても良さそうなのですが、実際の使用場面では自発呼吸が強い場合に自発呼吸のみで設定されたVTに達してしまうと完全なtubeCPAP状態になってしまうことがあります。確かにVTは維持されているのですが、実際のトレンドグラフでもVTはかなり上下していることも確かです。
このVGの機構をPAVやNAVAと比べてみると面白いことが分かります。VGでは自発呼吸が強くなるほど人工呼吸器からの補助換気圧は低くなりますが、PAVやNAVAは自発呼吸の強さに比例して加圧します。つまり、この両者は全く逆の働きをする呼吸モードと言うことができるかと思います。
では、この両者のどちらが優れているのでしょうか?
既にエビデンスレベルでCLDに対する有効性が示されているVGが相手では新参のPAVもNAVAも分が悪いですが、考え方としては使用する場面の違いが重要なのではないかと言う結論に個人的には達しました。
これは5月16日の 新型人工呼吸器登場!NAVA の時にも登場した図ですが、呼吸中枢から神経・横隔膜を経てきた呼吸の信号はPAVやNAVAの場合、自発呼吸の強さに比例するからこそ呼吸中枢へのフィードバックが効くのではないかと思います。つまり自発呼吸が前提なのであれば、やはりPAVやNAVAが優れていることは疑いの余地がありません。それではVGの位置づけは?と言うと、これは自発呼吸のない状態、つまり無呼吸時のバックアップ換気としてこそ、その有用性が発揮されるのではないかと考えました。VGにおいて一定の換気量を得るためになぜ圧が自動調節されなければならないのか?を考えた時、その理由が単純に肺のコンプライアンスによるのであれば、圧は肺のコンプライアンスにのみ依存して可変しますが、ここにもう一つ自発呼吸が因子として加わるとVGは2つの因子によって左右されることになります。このことがVGの挙動の不安定さを招いているのではないかと思います。一方、当科でもVGは生後早期でまだ鎮静をしている頃にはかなりの割合で使用しています。またこれまでCPAP+PAVのバックアップ換気では単なる従圧式換気を選択していましたが、ステファニーでもVTをターゲットとした換気は可能なので、この辺が今後の検討課題となるのかも知れません。
今回は(今回も?)かなり独断的な見解を述べてみました。かなり異論・反論はあるかとは思いますが、こうした議論がVGの位置づけを考える上での一助となれば幸いです。