2014.11.02
当院の総合周産期母子医療センターが開設されたのが平成16年11月。実は昨日でちょうど開設10周年を迎えました。当院は「 周産期医療の質と安全の向上のための研究 」に参加しており、昨日は当院でそのワークショップが行われました。このワークショップでは、全国でこの研究に参加しているNICU施設の診療上の様々なパラメータの平均値に対して県病NICUがどのような位置にありどこが強みでどこが弱みなのかの客観的データを示した上で、その改善のために何をしたら良いのか、中央の事務局の先生方も交えて意見交換を行います。またこの研究では2施設をペアにして互いにワークショップに参加し合うという形を取っていることから、今回は一昨年、 電子カルテの見学 でお世話になった国立長崎医療センターの小形勉先生がお越し下さいました。またこの他、山形の下風先生、秋田の新井先生も看護師さん3人を連れて参加して下さいました。
スタッフがワークショップの準備中です。
まず最初はNICUの見学からです。今回のテーマは栄養管理と感染対策です。見学もそうした視点からの見学となります。
司会は国立成育医療研究センターの森臨太郎先生です。
当院から神奈川県立こども医療センターへ国内留学中の川村先生も今回はチューターとして参加して下さいました。
次に東京女子医科大学の西田先生から当院の診療プロフィールが紹介されます。これは全国のデータベースと比較した当院の診療成績や施設規模・スタッフ数などが紹介されます。
今回の調査対象は2009年から2011年までの3年間の極低出生体重児の診療成績が対象になります。当院の患者さんの分布は、参加施設の平均像と比べて出生体重・在胎週数ともにやや小さめの赤ちゃんを扱っていることが分かります。
新生児科医師数はやはり全国でも少ない方で、医師1人に対するNICU病床数は全国平均が1.7~1.8であったのに対し当院は2.4と多めでした。医師の労働時間は3年間の集計で、ほぼ全員が過労死との因果関係が高いと言われる週57時間以上を軽く超えていました。
様々なデータが紹介されましたが、中でもNICUで最も重要視される「合併症のない生存退院率」が参加85施設中6位で偏差値66と言う好成績でした。当院は神奈川県立こども方式を導入しており、今回のデータはその移行期間でしたので、恐らく直近3-4年間の方がもっと良いはずですが、いずれにしてもこうした客観的な指標で評価されると言うことはありがたいことだと感じました。ちなみに2011年に限っては死亡率(=死亡例数/入院数)が参加77施設中なんと1位でした。
次に当院の診療状況に関して、当院スタッフから現時点で感じている問題点を示していきます。
次に神奈川県立こども医療センターの豊島先生から診療ガイドラインに関しての説明していただきました。まずはその前に神奈川県立こどもと当院との研修連携に関してご紹介して下さいました。
そしていよいよ本格的にワークショップが始まります。ワークショップでは今回のテーマである「感染管理」と「栄養管理」がどうやったら改善するかを3グループに分かれてディスカッションします。
まずは、参加者全員が思いつくままにそれぞれのテーマに関して思いつくままに色んなアイデアを出していきます。それを各グループのチューターの先生が意見を補ワートボードに貼り付けながらいくつかに類別していきます。
最後に各グループの意見が発表されていきます。今回のワークショップでの提案がどのくらい具体化されるかはともかくとして、こうした手法自体が組織内の問題意識の共有に非常に有効と感じました。同様のワークショップをスタッフ間で繰り返し行っていくことで、現存する様々な問題が解決できるのではないかと言う気がしました。
朝から夕方遅くまで、昼休みもほとんどない状態でのワークショップでした。森先生、豊島先生をはじめとしたINTACT事務局の先生方はこれをこれまで何度となく全国中で行ってこられたというご努力に心から敬意を表します。当院の総合周産期母子医療センター開設からちょうど10年の記念日に、これから先の10年のあり方に関するヒントをもらった気がします。ワークショップの終了後は宿泊して下さった先生方を囲んで飲み会です。
参加して下さった皆さん、ありがとうございました。丸1日大変お疲れ様でした。