2015.01.31
Babylog8000は新生児用人工呼吸器として1989年に開発され、日本国内のNICUでも広く使われている代表機種です。1997年には現行のBabylog8000plusとしてバージョンアップされ、当院でも2台が現役です。
当院のBabylog8000plusは、実はかなり歴史が古く、写真には「4東未 8.9.13」とありますが、これは2008年ではなく平成8年、つまり1996年に購入されたもので、20年近いベテラン選手です。私が当院に赴任したのが2000年、NICU開設が2001年で、このNICU開設の際、当院のBabylog8000を現行のBabylog8000plusへバージョンアップして現在も使用しています。
実はこのBabylog8000には浅からぬ因縁があります。まだ青森に赴任するとは夢にも思っていない頃、当時当院に勤務していた先生から突然電話がありました。「今度、新生児用の人工呼吸器を購入する予算が下りたのですが、何かお勧めの機種はありますか?」と言うものでした。当時の青森県知事であった木村守男知事が、当院の未熟児室を見学して下さった際、「県として何かできることはありませんか?」とたずねられ、急きょ予算が下りたのだそうです。
Babylog8000は当時の最先端の人工呼吸器ではありましたが、操作には階層が深めで、また旧バージョンはチューブリークのアラームがうるさくて看護師さんには不人気な機種でした。しかし、トリガー感度は非常に鋭敏で、グラフィックも搭載すると呼吸管理の勉強にも有用であり、何より自分自身がこの呼吸器で勉強したこともあって、迷わずBabylog8000をお勧めしました。
この電話をもらった時にはまさか自分が青森で働いて、この人工呼吸器を自分で使うことになるとは夢にも思っていませんでした。それから4年ほどして急きょ青森に赴任することとなり、以降、かれこれ15年近く苦楽をともに過ごしてきた愛機となっています。
人工呼吸器では、よくバージョンアップによって大化けする機種が時々ありますが、この機種もその一つです。Babylog8000はBabylog8000plusへのバージョンアップに際して、それまで最大の弱点だったチューブリークの補正機能が大幅にアップし、その後に登場した新型機種の追随を長きに渡って許しませんでした。結局、この機種を上回るリーク補正機能を持った機種は、後継機であるBabylogVN500まで現れませんでした。
Babylog8000plusを最初に使ったのは、前任地の北海道立小児総合保健センターの時でした。超低出生体重児のCLDⅢ型でどうにもならないほど機種が増大してしまった患者さんをなんとかしようと、Babylog8000plusをお借りしてPSVを試した時の効果は今でも忘れられません。
Babylog8000plusは今でも超低出生体重児の入院時には第一選択の人工呼吸器で、これは第一にPEEPが0.1cmH2O刻みで設定できること、基本モードがリーク補正機能も含めて極めて正確であることが、その最大の理由です。急性期の超低出生体重児は鎮静されていることが多く、それほど多くの機能は必要としません。むしろ安定的かつ正確に作動してくれることが第一優先ですので、その意味では後継機のVN500より優れているかも知れません。
長年連れ添ったBabylog8000plusですがそろそろ20年にもなりますし、後継機にその座を譲る日も近いのかも知れません。Babylog8000の登場が1989年、私の卒業も1988年とほぼ同期です。「Babylog8000とともに始まり、Babylog8000とともに終わるのかな」と、この20数年間を思い返しながら、その思いを書き留めておきたいと思います。