2015.10.12
10月10日(土)の青森県周産期講演会でご講演いただいた富山大学産婦人科の米田 哲先生のご講演でワークライフバランスに関する部分を少し詳しくご紹介させていただきます。
米田先生の奥様は産婦人科医師として同じ医局で働かれているそうです。お子さんが生まれ、生後4ヶ月になった時点で1ヶ月間の育休を取得されたそうです。育休と言うことは、この1ヶ月間、育児・家事全般をこなす「主夫」をされていたと言うことです。それまで母乳育児で育ってきた娘さんはほ乳瓶での授乳を嫌がり、最初はそこからの闘いだったそうです。
こうした経験をされた米田先生は、現在は富山大学産婦人科の医局長も務められているそうで、ここから先は医局長として、富山大学産婦人科医局としての取り組みをご紹介して下さいました。
詳細はスライドを読んでいただくのが早いと思いますが、一つの組織として女性が働きやすいようにしっかり配慮することによって、これだけ女性医師の離職率を下げることができていると言う事実はもの凄いことだと思います。労働環境整備前後の復職率の違いは際立っていますし、出産後の大学での常勤勤務率が86%と言うのも凄い数字です。しかも、これが医師の中でも最も激務と言われている産婦人科での話ですから、他の分野でできないなど言い訳もできないでしょう。
話はちょっと変わりますが、カーネギーメロン大学教授で2006年に自身が膵癌の末期症状にあることを知って「最後の授業」を行われたランディ・パウシュ氏をご存じでしょうか?この「最後の授業」の様子は『最後の授業 ぼくの命があるうちに』と言う本になり、ベストセラーにもなりました。
この「最後の授業」の時、当時まだ1歳半だった末娘のクロエちゃんに送った言葉を思い出しました。
大きくなったら、僕のある女性同僚の言葉を知ってほしい。すべての若い女性にふさわしい言葉だ。僕が聞いてきたなかで、いちばんいい助言でもある。
「ずいぶん時間がかかったけれど、ようやく気づいたの。自分に言い寄ってくる男性がいたら、気をつけることは簡単。彼の言うことはすべて無視して、彼のすることだけに注意すればいいの」そのとおりだよ、クロエ。
各科をローテーション中の研修医や学生さん達はあちこちの診療科から勧誘を受けることと思います。医局や病院に勧誘する時には良い話しかしないものですが、そこで思い出して欲しいのがこの言葉です。自分を勧誘してくる医局の先生がどんな話をしてくるかではなく、特に女性医師の場合、すでにそこで働いている女性医師がどのような働き方をしているのか?その医局としてどんな具体的な取り組みをしていて実績があるのかをしっかり見極めて欲しいと思うのです。
なので、ランディ・パウシュ氏の言葉を借りれば、
「自分を勧誘してくる医局があったら(教授がいたら)、気をつけることは簡単。彼(教授)の言うことはすべて無視して、彼の医局がこれまでやってきたことだけに注意すればいいの」
その通りだと思いませんか?