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成育科ブログ

東奥日報連載26回目 人工乳の「立場」を考える

2015.12.10

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が26回目でした。これまで母乳が大切とばかり述べてきましたが、これでは人工乳の「立場」がないので、今回は視点を変えて人工乳の「立場」からその必要性に関して述べてみました。

第26回目 (Custom)

以下、本文です。

これまで母乳が大切とばかり述べてきましたが、これでは人工乳の「立場」がないので、今回は視点を変えて人工乳の「立場」からその必要性に関して述べてみたいと思います。

結論から言えば、人工乳とは一つの「ツール」なのではないかと私は考えています。

昔、赤ちゃんのお風呂上がりに湯冷ましを飲ませるよう指導していた時代がありました。この指導はかなり徹底されていたようで、いまだに多くのお母さんから「お風呂上がりの湯冷ましはいらないんですか?」と聞かれます。しかし、その答えは「ノー」です。

昔の人工乳は濃度がやや濃かったため、赤ちゃんには適宜白湯を与える必要がありました。そのため、このような指導がされていたのです。

母乳であれば、以前から白湯は必要ありませんでした。人工乳で育てられている赤ちゃんも、今は必要ありません。
人工乳は母乳を目標に改良され続け、それでも遠く追いついてはいないものの、日進月歩の進化を続けています。改良自体は素晴らしいことです。

問題はその使い方にあります。私は、人工乳はあくまで必要な時に加えられるべきものであると考えています。
母乳は出産直後からどんどん分泌されるものではなく、最初の数日間はホルモンの影響でなかなか増えてこないことがしばしばです。

赤ちゃんの側もそれが前提になっていて、最初の数日間、ほとんど母乳が飲めなかったとしても、水分と栄養が維持されるようになっています。なので、「赤ちゃんは水筒とお弁当を持って生まれてくる」と言われます。

しかし、これはすべての赤ちゃんに当てはまるわけではありません。

例えば、早産児や体重が少なめの赤ちゃんの場合、完全母乳にこだわっていると低血糖になりやすく、点滴が必要になれば入院せざるを得ません。赤ちゃんが入院すると通常はお母さんと離ればなれになりますので、結果として母乳の割合も下がってしまいます。むしろ、人工乳を加えて赤ちゃんの血糖値を保ちながら、お母さんと一緒にいてもらった方が母乳分泌も増え、母乳育児は確立しやすくなるのです。

よく泣く赤ちゃんの場合に人工乳が必要になることもあります。激しく泣くと、体から水分がどんどん水蒸気として出て行き、体重が減ります。赤ちゃんが泣くのに理由がある場合は、原因を取り除けることもあるので、すぐに人工乳を足す判断が正しいとは限りませんが、お母さんの母乳分泌が追いつかない時期にはやむを得ない場合もあります。

これらはあくまでいくつかの例に過ぎませんが、必要な時に必要最低限の人工乳を加えることは決して悪いことではありません。

よく「完全母乳」という言葉が使われます。そもそも、この言葉自体に問題があるようにも思います。

「完全母乳」と言うと、どうしても母乳以外のもの(=人工乳)を一度も飲ませないと考えがちです。そうではなく、普通に「母乳育児」で良いのではないでしょうか?

1回でも人工乳を飲ませてしまったら「負け」のように思う必要は全くありません。確かに厳密に言えば、人工乳は牛由来なので、異種タンパクによるアレルギーのリスクはありますが、そのリスクよりも、必要な時に人工乳を加えないことによる脱水や低血糖の方が、ずっとリスクとしては高いのです。

母乳育児の支援者は、リスクが高いのはどちらなのか常に冷静に見極める必要があります。ここを取り違って、一口も人工乳を飲ませないことを重視するような指導がされていれば、それは「こだわり」と言われても仕方がないでしょう。

重要なのは、「ツール」である人工乳を正しく使いこなすことなのではないかと考えています。

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