2016.05.18
東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が32回目でした。
今回は先日、 東奥日報明鏡欄に医療的ケア児のお母さんからの投稿が(2016年4月20日) でもご紹介させていただいたこの明鏡欄への投稿に関連して、医療的ケア児を巡る問題を取り上げてみました。
以下、本文です。
4月20日付の東奥日報夕刊明鏡欄に「医療的ケア」を要するお子さんのお母さんから「医療的ケア児を受け入れてほしい」と言う投稿が掲載されました。
「医療的ケア児」とは、病気や障がいのため痰の吸引や管を通しての栄養の注入など、医療従事者にしか本来その行為が許されていないケアを要するお子さんたちのことです。
こうした「医療的ケア児」のお母さんが、お子さんの預け先が見つからず、結果として働くことができないどころか、お子さん自身他のお子さんとの交流さえままならないと言うのです。こうした現実を世に訴えるべく勇気を持ってのご投稿には心から敬意を表します。
そもそも保育所に入所できない待機児童が社会問題化している今の世の中ですから、医療的ケア児に限らず、お子さんになんらかの障がいがある場合の保育園探しが困難なことは想像に難くありません。日々の診療の場でも、困っているご家族のお話はよく耳にします。
これまでも述べてきたように、今や共働きが一般化、というより共働きせざるを得ないご家庭が増えており、お母さんが働けないことの経済的不利益は明らかです。
一方で医療費抑制政策の一環として、在宅医療は拡大の方向にあります。在宅医療への支援には訪問看護制度などがありますが、あくまでご家族の負担軽減という観点での制度であり、就労という観点から見直せばあまりにも貧弱と言わざるを得ません。
「医療的ケア」はその名の通り医療行為を含むものですから、本来は医療従事者にしかそれを行うことが許されません。このことが保育園に看護師さんを配置しなければならない理由となり、結果として預け先を確保できない高いハードルとなっています。
ただ、なぜかご家族やご本人には安易と言っていいくらい、それらの医療行為を行う事が認められてしまっています。そうしないと在宅医療が促進できないからなのでしょう。
ご家族による「医療的ケア」を安易に認め、それに依存した家族の過剰な負担を前提とする一方で、ご家族以外の方がこのケアを行うことを公的に認めていない施策そのものに大きな矛盾があり、これこそが問題の根幹とも言えます。
ただし、そうかと言って、例えば保育士さんやその他の方たちがケアを行えるよう安易に範囲を拡大することは、危険を伴う可能性がありますので、そこは慎重である必要があります。
一方、小中学校では「医療的ケア児」に対しての取り組みが徐々にではありますが進んできています。小中学校は義務教育なので、対応せざるを得ないという側面があるのでしょう。逆に保育園や幼稚園は義務教育でないことが対応の進まない原因になっているのでしょう。
ではどうしたらこの「医療的ケア児」の問題を解決することができるのでしょうか? 次回は問題解決への取り組みをご紹介させていただきたいと思います。
(文責 成育科 網塚 貴介)