2016.09.17
9月17日の報道特集で「医療ケアが必要な子を育て働くこと」をテーマにした特集が放送されました。
まず、障害児を育てる母親の就労率は5%にすぎない現状が紹介されます。
その背景として、特に医療的ケア児を預かることのできる保育施設がないことが挙げられ、その先駆けとして日本初の障害児専門の保育施設である ヘレン の取り組みが紹介されました。
そこには小池新都知事も視察に来られていて、「お母さんも働けて、収入も上がって」と仰って下さっていました。
ヘレン代表の駒崎さんも、お子さんに障害があってお母さんが働けなくなると貧困に陥る可能性にまで言及して下さっていました。
一方、医療的ケア児が他のお子さんと一緒に哺育されることは、そのお子さんの成長にもつながり、逆に健常なお子さんにとっても貴重な体験となること、と言うよりも人としての優しさを学ぶ機会ともなり得ることもお子さんのお父さんの言葉としても語られていました。
本来であれば医療的ケア児も健常なお子さん達と一緒に生活することが望ましいけれども、一方で、現在の枠組みの中ではヘレンのように障害児を専門にあずかる施設にならざるを得ないジレンマがヘレンの園長先生からも語られていました。「将来的にはヘレンがなくなるのが理想的」と言う言葉は、こうした先駆的な取り組みをされている方の言葉としてはとても重いものだと感じます。
そして、ここからは神奈川こども医療センターの豊島先生と星野先生の登場です。お二人とも口を揃えて、NICUから退院後の社会資源が乏しい中で救命にだけ取り組むことへの問いかけがされていました。
これまでこのブログでも、また 東奥日報の連載 でも障がいや医療的ケア児のお母さんの就労問題に関しては何度も取り上げてきました。テレビ等のメディアでも医療的ケア児のことを取り上げたものはありましたが、今回ほど明確に「医療ケアが必要な子を育て働くこと」を前面に押し出した特集は記憶にありません。と言うよりも、障害児や医療的ケア児への支援のあり方を考える学会ですら、ここまで「医療的ケア児を育てて働くこと」に対して明確されたものはあまり見た記憶がありません。それほど、ある意味医療従事者の問題意識を超えるほどに実に画期的な放送だったと感じました。今回の特集からさらに大きく支援が拡充されていくことを願ってやみません。
以下、ご参考までにこれまでの記事をまとめておきます。
2016.04.20 東奥日報明鏡欄に医療的ケア児のお母さんからの投稿が
2016.05.18 東奥日報連載32回目 医療的ケア児のお母さんからの投稿を巡って
2016.06.08 メディカルデイケアとは?~横浜・ケアハウス輝きの杜
2016.06.23 東奥日報連載33回目 医療的ケア児への支援 前編
2016.07.22 公明党大阪府議会議員団の皆さんによるNICU・成育科視察
2016.07.28 東奥日報連載34回目 医療的ケア児支援 後編~それぞれの思いのリレー
2015.11.22 「続・赤ちゃんを救え〜助けられるようになった小さな命」
2015.10.14 小児在宅医療シンポジウム~母親の就労の観点から
神奈川県立こども医療センターの豊島先生のブログではこの番組の動画ページも紹介されています。
報道特集(2016年9月17日)で放送:「医療的ケアとともに生きるこどもと家族のサポートのあり方」
(文責 成育科 網塚 貴介)