2018.04.30
福岡での日本小児科学会の続きです。日本小児科学会総会に毎年参加していると、このところ小児医療・小児科医の未来に関する話題が非常に多くなっている気がします。少子化がこれだけ進んでいますので、小児医療も小児科医も変わっていかなければならないと言う意識の現れのように感じます。今回もこうした演題やシンポジウムを数多く拝聴してきました。
今回特に気になったのが以下の3つのシンポジウムです。中でも特に興味深かったのが是松先生のご発表です。
是松先生はこれまでの「受け身の医療」の枠組みから、保険・福祉・教育・保育と連携して、例えば地域の予防接種率を向上させたり、行政と協働して任意予防接種を公費化させたり、発達障害児の支援や学校でのアレルギー対策、在宅医療支援などの多岐にわたる取り組みの中で、こうした活動が結果として、感染症が減少したり、不登校が減少したり、合計特殊出生率が上昇したりと、まさに小児科学会の将来構想にもある「コミュニティ小児医療」の実践例を示されていると感じました。
学会2日目以降も興味深いシンポジウムが続きます。学会最終日になっても先ほどの是松先生のご発表が頭から離れない状態で診療報酬改訂のシンポジウムを聞きました。最後の討論のところでの議論では、小児科は基本的に少子化なので全般的な「売り上げ」としては右肩下がりにならざるを得ない、ここで今後いくら小児科の診療報酬を増やしたところで、すでにその枠組みで問題解決可能な時期は過ぎてしまっているのではないか?すでに新たな時代に入ってきてしまっていると言う論調だったように思います。それはまさにその通りで、これからはむしろ患者さんを何人診たから何点と言うような診療報酬の枠組みから離脱するしかないのでは?そしてその活路こそ是松先生の取り組みの中にあるのではと感じました。ただ、急性期中心の小児医療からコミュニティ小児医療へ大きく舵を切ることが今後の小児医療のあり方なのだろうなと言うことを感じる一方で、そのこととこれまで行ってきた小児科医師の集約化の方向性との両立をどうしていくのかが今後の鍵になるのかな?と思いながらの学会となりました。
(文責 成育科 網塚 貴介)