2018.08.03
8月2日には第1回の青森県医療的ケア児支援体制検討部会が開催され参加してきました。この会は文字通り青森県内の医療的ケア児の支援体制を検討する場で、県内各地から医療、看護、福祉、保育、教育などに加えて、実際の患者さんのご家族にも加わっていただいた会となっています。
会の最初には県の障害福祉課の担当の方から大筋の方向性に関してご説明があり、続いて青森県における現状の問題点や今後の課題に関するまとめをご説明しました。
医療的ケア児はこの10年で倍増しており、特に人工呼吸器を必要とするお子さんは10倍にもなっていると言われています。
従来の超重症児スコアは知的障害と身体障害の2軸で構成されていましたが、ここに3軸目として医療的ケアの重症度が加わると、医療的ケア児としては重度なのに障害としてはゼロ~軽度と判定されてしまうお子さんが増えていることに対して、社会の対応がまだまだ未整備な状態となっています。
また、制度上も高齢者では介護保険の枠組みがあるのに対して、小児では様々な支援の枠組みが存在するにもかかわらず、これらを統括する仕組みがないことが、医療的ケア児のご家族の大きな負担ともなっています。
次に、昨年青森県と青森県医師会で行われた医療的ケア児に関するアンケート調査の結果をご紹介した上で、青森県の現状を踏まえた上での今後の課題や方向性に関してもお話しました。
一般的な小児特有の問題に加えて、青森県もしくは地方特有の問題もあります。特に人口密集地の首都圏や関西などと最も大きく異なるのが、少ない患者数が広大な面積の県内に点在しているという点です。患者数の少なさは支援に関わる人にとっては経験値の少なさにもつながります。しかも、冬には豪雪が容赦なく襲ってきます。
医療的ケア児の支援体制構築には人材養成が欠かせません。これまで医療的ケア児の支援を担ってきた人材だけでは地域のリソースとして明らかに不足しています。支援体制を充実させるにはいかにして新規参入者を増やすかが鍵となります。
また、ただ人材を増やせばいいわけでもなく、しっかりとした地域での連携体制も構築していく必要があります。「連携」という言葉ほど簡単に使われながら、実をあげるとことの難しい言葉はないでしょう。よく行政の図などでいろんな施設が矢印でつながれた図をみかけますが、これが「絵に描いた餅」にならないことが何より大切です。そのためには、関係者間が顔の見える人間関係を構築していく必要があります。
図中に(参考:周産期シンポジウム)とあります。これはかつて青森県の乳児死亡率を改善させるためにはどうしたらいいか?と県が主催したシンポジウムです。ここで話し合われた内容もさることながら、地域も大学も異なり、それまで面と向き合ったことのない県内の周産期関係者が直接話し合うきっかけとしてとても重要な役目を果たしてきたと言う経緯があります。きっとこのときと同じように(とは言っても関係する職種・部門は遙かに多いのですが)、互いに顔の見える関係を構築することができれば、きっとうまく行くのではないかと思っています。
部会終了後にご家族の代表の方と県の担当者の方達と一緒に。
青森県内の医療的ケア児支援はまだこれが最初の一歩でしかありません。しかし、万里の道も一歩から。まだまだよちよち歩きどころかハイハイかも知れない一歩かもしれませんが、これが今後の大きな進展の最初の一歩となることを願っています。
(文責 成育科 網塚 貴介)