2019.02.17
先週末は毎年長野県大町市で開催される新生児呼吸療法モニタリングフォーラム(通称:信州フォーラム)に参加するため長野県大町市に行ってきました。信州フォーラムと言えば、5年前の帰り道で遭難しかけたことを以前ご紹介したことがあります。
2014/2/14 信州フォーラム旅日記 番外編
ちょうど平昌オリンピックで金メダルを取った小平選手の出身地である茅野市を過ぎたあたりが4年前に遭難しかけたところでした。
昨年のこのブログでも「昨年が最後」と言いながら今年も参加と書いているように、NICUには関わっていないので「毎年、今年が最後」と言いながらも今年もまた6時間かけていつもの会場にやってきました。完全に「もう行かない詐欺」みたいになってます。
今年は青森市内も比較的雪の少ない冬でしたが、長野の方はもっと少なくてびっくりしました。毎年恒例の雪だるまも心なしか力ない感じです。雪が少ないので作るのは大半だったのではないかと思います。
会場に到着してすぐに、昨年度まで当院で初期研修をされていた森川先生にも久しぶりにお会いできました。
今回の信州フォーラムでは初日の最終セッションで「HFO再考」と題したセッションのモデレーターを仰せつかってやってきました。
最初の演者はピストン式HFOの開発社・発明者であり、メトラン社の創業者であるフック会長から、HFOの開発の歴史に関してお話ししていただきました。我々世代はHFO開発の歴史秘話を先輩世代の先生方から直接聞いていましたが、NICUで働き始めた最初の頃からHFOがあった若い世代の方達、つまり「HFOnative世代」の方達にとってはあまり知られていないお話のようにも思います。それこそ紆余曲折の末に今の形に辿り着いたのですが、そこに至るまでの過程はそれこそ今の朝ドラ「まんぷく」の萬平さんを彷彿とさせるものでした。
次の演者は一昨年の夏に見学させていただいた埼玉県立小児医療センター新生児科の小林早織先生で、HFO下における「経肺圧」を中心としたお話をしていただきました。今回のご発表は確か一昨年の日本新生児成育学会のポスター発表でHFOにおける経肺圧の意義に関しての考察が非常に興味深かったので演者としてお願いしました。一言で言えば、HFOに限らず人工呼吸管理中には、肺にかかっている圧は人工呼吸器からの陽圧だけではなく、胸腔内圧との差である「経肺圧」がかかっているのですが、それは例えば自発呼吸下であれば自発の吸気・呼気それぞれで圧が変動し、なおかつそれが極端な場合にはコンプライアンスにも影響があると言うお話でした。もっと具体的には、例えばHFOで人工呼吸管理しているのに強い自発呼吸が出ているようなお子さんの場合、肺にかかっている圧は本来のMAPよりも低かったり高かったりすると言うものです。
3番目には、こちらも一昨年の冬に見学させていただいた東京女子医科大学八千代医療センター新生児科の佐藤雅彦先生から、HFVにおける肺容量と換気量に関してご講演いただきました。佐藤先生は、今や全国の新生児科医師の中でおそらく最も人工呼吸管理に関しての造詣の深い先生で、このご講演の内容も目からうろこというか、とにかく圧巻の一言でした。例えば最初のフック会長のご発表で、昔、HFOの波形を吸気:呼気の比率を1:1ではなく1:2とかいろいろ変えてみたことがあったが、それでは実際に肺にかかる圧が下降してしまい、そこで現在の1:1に辿り着いたとのお話がありましたが、佐藤先生のご発表の中で、この比率が1:2では吸気フローが呼気フローよりも多いため圧力降下が生じる原理を数式を使って見事に説明して下さいました。
3人のご発表後の会場とのディスカッションもかなり盛り上がりました。
発表を全部終えての集合写真です。いいセッションになったと自画自賛して終えました。
さて信州フォーラムと言えば、宿は温泉旅館ですので、毎年「部屋飲み」があちこちで行われます。今年は初日の夜は同年代で仲良しの先生達と一緒に夜中まで語らいあいました。
2日目の懇親パーティの後もまたさらに大勢が集まりこんな感じに。埼玉医科大学総合医療センターの須賀さんが持ってきてくれた美味しい日本酒もあっという間でした。
「今年で最後」と言いながらも、なんかこの先もしばらく毎年参加するのかも?と思いながらの3日間でした。
(文責 成育科 網塚 貴介)