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成育科ブログ

2018.10.12

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東京医科大学が大学入試で女子受験者を一律減点していたことが明らかとなり、大きな社会問題として各メディアでも頻繁に取り上げられています。今日のニュースでも東京医科大学以外にも複数の大学で女子や浪人生を不利に扱っていた疑いがあるとして文部科学大臣が記者会見で明らかにしたとの記事もありました。

一方で、女性医師の場合には出産・子育てで医療現場の一線で働き続けることができない場合が多く、こうした入試での大学の方針に対しては「必要悪」との見方も、これは特に医療現場からの声としてもなかなか根強いものがあるとも感じています。

この問題が明らかとなる前、今年の5月に「働く女子のキャリア格差(国保祥子著、ちくま新書、2018/1/10)」と言う本を読みました。
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この本は出差・育休を経験された経営学者である筆者が、働く女性が仕事と育児を両立しながら活躍できるようにするための組織と個人に関する課題を解決することを目的としたご研究の一部を紹介されたものです。女性は(実際に産むかどうかは別にして)妊娠・出産期の展望抜きに仕事での活躍プランは描けないこと、そして現在はこの展望が極めて描きにくい職場環境になっていることを様々なデータや個別例を通じて解説されています。

現実問題としては、多くの職種においてキャリア形成の時期と生物学的な出産適齢期は重なってしまいます。つまり、この時期に出産すると言うことは「仕事の経験を積むチャンス」を逃すことと等しくなってしまいます。ここで、それでは育児は大変だからと配慮されることが、逆の結果を招いたり、または、子育て中と言うことで「頑張っても報われない」と感じることが、かつてはバリキャリの女性が真逆の「ぶら下がり」社員になってしまったりすることもあります。これらの背景にはコミュニケーションのミスマッチが潜在していると筆者は指摘します。

細かなことに関しては本書をお読みいただいた方がいいと思いますが、子育て中の女性の働き方に関しては、つい個人の問題と捉えがちですが、現実には個人の力ではどうにもならない構造的な問題が横たわっています。トラック競技に例えるなら、男性は普通にトラックを走っているのに、子育て中の女性は障害物競走で、しかも条件が異なるのに同じタイムで競うのが「平等」とされている感じでしょうか?しかし、このような現状でも、中には正しいコミュニケーションであったり、またはこうした構造があることを組織が「学ぶ」ことがその突破口になる場合もあるのだろうなとも感じました。

つまり子育て中の女性が活躍するにもノウハウが必要であり、経営者や管理者の立場になる人たちにとってはこうした構造的背景まで熟知した上で組織をマネージメントする力が求められている時代になったということなのでしょう。「女性は子育てすると一線で働けない」と断ずるような発言など不勉強・不見識と一蹴されるぐらいの世の中が目の前に来ているのだと思います。

ところで、「次世代の『あたりまえ』を作るための半径5メートル」からはじまる、この本の第7章「女性が活躍する会社にしか未来はない」は、筆者がこれから社会に出る全ての女性に対してのエールになっています。おそらくは筆者の思いのこもった章なのでしょう、読み終わった後に不覚にも涙してしまいました(ちなみに東京の会議に向かう新幹線の車中でした)。

医療現場でも、例えば今年5月の小児科医に明日はあるか?~女性医師の働き方と「最後の授業」でご紹介した富山大学の小児科や産婦人科のように「女性医師が働く」と言うことにしっかりと向き合って様々な工夫をされている組織も既に存在します。医療に限らず全国のあらゆる分野・地域で、働く女性を取り巻く構造的問題の正確な理解の上に立った取り組みが当たり前になされる成熟社会になることを心から願っています。

(文責 成育科 網塚 貴介)

(クリックすると東奥日報連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」のバックナンバーへリンクします)

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2017.08.27

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8月26日(土)朝に朝日新聞デジタルに 乳幼児の入院付き添い、なぜ24時間?(記者の一言)
と言う記事が掲載されました。この記事は 患者を生きる シリーズの中で 小さな肺(1)「明日死ぬかも」何度も 移植待つ日々 と言う連載を書かれている錦光山雅子記者が、その取材の過程で「どうしてもおかしいと思ったこと」がありました。連載に登場した女の子が一般病棟に移ることを病院から勧められた際、家族は24時間付き添うよう言われたのです。その疑問から生まれたのが今回の記事です。

以前2014年1月に朝日新聞のオピニオン欄に 「病気の子の付き添い 母親への依存見直しを」 と投稿したことがご縁で、今回の記事執筆に際して取材していただきコメントもさせていただけました。

この記事の中でも特に結びのこの分に共感します。「病院の外では、少子化対策や保育園の整備の充実が叫ばれている中、病院の中では、少子化対策とはほど遠い、子どもとその家族の風景がある。言葉を失いました。」

「病院の外」では少子化対策が叫ばれているのに、なぜか「病院の中」は少子化対策とは無縁で、あたかも社会から隔離されているのか、社会の動きとは全く別のところで動いているようにしか思えません。このことは 2015年3月の東奥日報連載12回目 付き添いの建前と現実 でも書かせていただきました。

こうした記事が拡がることで少しでも入院中の環境が良くなることを願っています。

(画像をクリックすると記事のページにリンクします)

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(文責 成育科 網塚 貴介)

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2017.03.01

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昨日夕方にATVの「 わっち!! 」で医療的ケア児の特集が放送されました。今回の特集は県内で医療的ケアを要するお子さんを育てているご家族が「私たちの現状を知ってほしい」との願いから取材に応じて下さり実現したものです。医療的ケア児とそのご家族への支援体制が整っていない現状と支援に向けた課題、県内での状況についてお伝えして下さいました。

以下、画面のキャプチャ画像をお示しします。
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お子さんが医療的ケアを要すると、お子さんの預け先はほぼ皆無に近く、お母さんが働くことはまず不可能となります。お子さんを保育園に預けられないと言うことは、これはお母さんの就労の問題を越え、実はお子さん自身の発達の問題にまで影響します。医療的ケア児の場合、就学まで全く集団生活を経験することがない場合も十分にあり得ます。それ以前の問題として、こどもは実生活の様々な場面からの刺激を通して成長していく存在です。

しかし、現状は医療的ケア児の人数すら把握できていません。まずは、現在実施中の医療的ケア児に関する調査の結果を待って、今後の施策に活かして欲しいと思います。

ちなみに、昨年6月3日に厚生労働省・内閣府・文科省の連名で 医療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進について と言う通知が出されました。今回の特集内にもあったように、医療的ケア児の問題はこれまでの行政の枠組みのどこにもあてはまらない問題であることから、その上で省庁を越えて連携することでしっかり支援しましょうと言う主旨の通知です。こうした通知が出されたことも、社会的認知が進んできた証なのでしょう。今回のようにマスメディアで取り上げられることが追い風となって欲しいと願うばかりです。

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(文責 成育科 網塚 貴介)

(クリックすると東奥日報連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」のバックナンバーへリンクします)

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2016.09.17

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9月17日の報道特集で「医療ケアが必要な子を育て働くこと」をテーマにした特集が放送されました。
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まず、障害児を育てる母親の就労率は5%にすぎない現状が紹介されます。
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その背景として、特に医療的ケア児を預かることのできる保育施設がないことが挙げられ、その先駆けとして日本初の障害児専門の保育施設である ヘレン の取り組みが紹介されました。
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そこには小池新都知事も視察に来られていて、「お母さんも働けて、収入も上がって」と仰って下さっていました。
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ヘレン代表の駒崎さんも、お子さんに障害があってお母さんが働けなくなると貧困に陥る可能性にまで言及して下さっていました。
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一方、医療的ケア児が他のお子さんと一緒に哺育されることは、そのお子さんの成長にもつながり、逆に健常なお子さんにとっても貴重な体験となること、と言うよりも人としての優しさを学ぶ機会ともなり得ることもお子さんのお父さんの言葉としても語られていました。
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本来であれば医療的ケア児も健常なお子さん達と一緒に生活することが望ましいけれども、一方で、現在の枠組みの中ではヘレンのように障害児を専門にあずかる施設にならざるを得ないジレンマがヘレンの園長先生からも語られていました。「将来的にはヘレンがなくなるのが理想的」と言う言葉は、こうした先駆的な取り組みをされている方の言葉としてはとても重いものだと感じます。
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そして、ここからは神奈川こども医療センターの豊島先生と星野先生の登場です。お二人とも口を揃えて、NICUから退院後の社会資源が乏しい中で救命にだけ取り組むことへの問いかけがされていました。
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これまでこのブログでも、また 東奥日報の連載 でも障がいや医療的ケア児のお母さんの就労問題に関しては何度も取り上げてきました。テレビ等のメディアでも医療的ケア児のことを取り上げたものはありましたが、今回ほど明確に「医療ケアが必要な子を育て働くこと」を前面に押し出した特集は記憶にありません。と言うよりも、障害児や医療的ケア児への支援のあり方を考える学会ですら、ここまで「医療的ケア児を育てて働くこと」に対して明確されたものはあまり見た記憶がありません。それほど、ある意味医療従事者の問題意識を超えるほどに実に画期的な放送だったと感じました。今回の特集からさらに大きく支援が拡充されていくことを願ってやみません。

以下、ご参考までにこれまでの記事をまとめておきます。
2016.04.20 東奥日報明鏡欄に医療的ケア児のお母さんからの投稿が

2016.05.18 東奥日報連載32回目 医療的ケア児のお母さんからの投稿を巡って

2016.06.08 メディカルデイケアとは?~横浜・ケアハウス輝きの杜

2016.06.23 東奥日報連載33回目 医療的ケア児への支援 前編

2016.07.22 公明党大阪府議会議員団の皆さんによるNICU・成育科視察

2016.07.28 東奥日報連載34回目 医療的ケア児支援 後編~それぞれの思いのリレー

2015.11.22 「続・赤ちゃんを救え〜助けられるようになった小さな命」

2015.10.14 小児在宅医療シンポジウム~母親の就労の観点から

神奈川県立こども医療センターの豊島先生のブログではこの番組の動画ページも紹介されています。
報道特集(2016年9月17日)で放送:「医療的ケアとともに生きるこどもと家族のサポートのあり方」

(文責 成育科 網塚 貴介)

2016.06.21

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周産期医学6月号 の特集「 周産期領域の新しい検査法 」で「即時画像表示機能つきポータブルX線撮影システム」の有用性に関して解説しました。
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内容的には昨年7月に福岡で開催された 第51回日本周産期・新生児学会のランチョンセミナーでお話しさせていただいた「より低侵襲かつ安全なX線撮影を目指して~フラットパネルの新生児急性期医療への効果」のダイジェスト版みたいな感じです。
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フラットパネルの有用性として

1)従来のX線撮影における問題点とその解決
2)ポータブル撮影の侵襲低減
3)安全なカテーテル等挿入のために
4)透視の代替え手段として

に関して述べました。

まとめのところでも述べましたが、このシステムを導入してみて分かったことは「今までいかに経験則による盲目的な処置を行ってきたのか!」と言うことです。こうしたシステムが今後はNICUの施設基準に盛り込まれるべきなのではないかとさえ感じています。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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