先週の木曜日(12月19日)、先月当院へ見学に来て下さった仙台市立病院の千葉洋夫先生にお招きいただき、当院のNICU部門システムのご紹介をさせていただきました。
うちの部門システムは当科オリジナルで、ジャイロさんと言う会社の方と一緒に開発しました。NICUの業務は成人に比べてとても細かく、少なくとも開発当時は既存の大手電カルではとても実用にならず、無理に電子カルテを使おうとすれば診療上のリスクが高まることは誰の眼にも明らかでした。そこで、うちの部門システムでは特に安全機能を最重要視した作りとしました。
患者認証機能は既存の電カルでも当時から可能でしたが、うちのシステムでは処方や栄養に関しても認証できるように設計しました。小さな赤ちゃんを扱うNICUでは注射だけではなく処方や栄養の間違いでも大事故につながりかねませんし、また更に母乳間違いは感染症のリスクもあります。システム導入以降はこうした患者間違いはほとんど見かけなくなりました。母乳認証も今では他のメーカーでもかなり導入されるようになってきましたが、母乳栄養の患者認証機能の実用化は恐らく全国で最も早かったのではないかと思います。
指示入力に際しての安全機能には入力制限機能と入力支援機能があると考えています。入力制限機能とは誤った指示は極力入力できないようにする機能で、例えば混合すると混濁してしまう薬剤を混注できないようにするとか、体重あたりの投与量が極量を超えた時に警告するなどです。うちのシステムでは混注だけではなく、異なるシリンジからでも同一ルートから混注不可の薬剤を入れようとした時に警告を発する機能もあります。
入力支援機能としては、例えば遮光や専用チューブが必要な薬剤の場合やフィルターを通してはならない場合には自動的に指示にそのことが入力されるとか、そのほか、複雑な計算を要する薬剤投与量を自動計算したりすることが可能です。
既存の電カルは医事会計をメインに考えているためか、会計を取りやすくするためにどうしても医療者側がそれに合わせたオーダー入力を個別に行わなければならない部分が多いと感じています。この点に関して、当科のシステムでは基本的に医療者は自分たちの仕事をしているだけで、そこから必然的に発生した指示や記録を自動的に拾い上げることによって、会計のためのオーダー入力を可能な限り不要とすると言う特徴もあります。
例えば、医師が人工呼吸器の指示を入れたと言うことはその患者さんは人工呼吸器(と酸素)を使用している訳ですから、それはそのまま処置の会計に飛びますし、また、看護師さんが浣腸を実施すれば、その記録から浣腸の会計を発生させると言う仕組みです。
当科のシステムを開発してからかれこれ8年の歳月が流れましたが、こうした機能に関してはまだまだ最先端であるとの自負があります。NICUで働く側にとっては部門システムは必須と思いますが、その導入には予算も必要ですので病院側の理解が必須です。NICU部門システムの必要性を院内で訴えて、それが何に役立つのか?と問われた時、最優先されるのは医療安全のはずです。このことを最優先することによって病院側にもその必要性が認められ、そこで初めてさらに付加的な診療水準の向上や入力に際しての労力軽減の点でも現場が恩恵を受けることが理想的なのではないかと考えています。願わくばこうした部門システムが全国一律に導入が認められる時代を目指したいと思っているところでもあります。
講演の後は町中に繰り出して懇親会を開いていただきました。
途中、光のページェントがとても綺麗でした。
懇親会後の集合写真です。若手の先生方と多くの研修医の皆さんがたくさんいてとても羨ましかったです。千葉先生、ありがとうございました。