昨日は第4 回青森県周産期講演会とあおもり母乳の会第15 回学習会を当院で同日開催しました。一昨年、11月3日の「いいお産の日」に同日開催し昭和大学の水野克己先生をお招きして以来の同日開催です。今回の講演会は大阪府の総合周産期母子医療センターである愛仁会 高槻病院の森口紀子さんをお招きしてDevelopmental Care と母乳育児を中心にご講演いただきました。昨年度、当科のスタッフ数名が高槻病院で研修させていただいた際にもお世話になったこともありますので、せっかくの機会なので森口さんをお招きするなら当科のNICUでNIDCAP(Neonatal Developmental Individualized Developmental Care and Assessment Program)の実技指導もお願いしました。講演会は夕方からですが、朝一番の飛行機で大阪から青森までお越し下さり、午前中のケアの観察から始めていただきました。

入院中の赤ちゃんのお母さん達にあらかじめご了解いただき、通常のケアの様子を動画撮影しながら観察していただきました。

普段、大きな声で話しているのに慣れてしまっているので、森口さんがお母さんに話しかける声は低すぎるようで、皆、聞き耳を立てるように聞き入っていました。


午後からはワークショップ形式で午前中の観察の振り返りを行います。

午前中の動画や、森口さんが持ってきて下さったケアの動画を見ながら、赤ちゃんの環境や赤ちゃん自身の強み・弱みなどの項目をグループごとに列挙していきます。こうした議論の中から、これまで当たり前に行っていたケアが、実は赤ちゃんにとってストレスになっていたことに気づかされました。


次に、午前中のケアで行った保育器からカンガルーケアへの移動の際のケアをスタッフ同士で実際に人形を使って行ってみます。お母さんの立場になってみると、また異なった気づきがありました。どのようにしたら良いか、また繰り返しながら探っていきます。

ここで突然、ワークショップをやっていた部屋が停電になってしまいました。この日は病院の電源工事があり事前の確認では大丈夫とのことでしたが、やむなくランタンで明かりを採りながら続行しました。

そして、ほとんど休む間もなく17時からの講演会です。



今回、森口さんはお子さんを連れていらっしゃいましたが、このスライドはお子さんが赤ちゃんの頃、Developmental careの基本理論として有名なアルスのサイナクティブモデルのDr.Alsが2007年に講演のため来日された際に、Dr.Alsがお子さんを抱っこされた際の写真です。

講演会の終了後はスタッフに健生病院の齋藤先生も参加していただいて、あれこれまたお話させていただきました。今回はとにかく何から何まで「目から鱗」の連続でした。課題が多すぎて何から手をつけて良いのか悩むところですが、まずは一歩一歩スタッフとともに少しずつでも進歩して行ければと思っています。
最後は森口さんのお子さんの「かに~」のかけ声で集合写真です。

森口さん、早朝から遅くまで休みなくご指導いただきありがとうございました。

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今週、10月10日から11日の2日間、韓国の仁川(インチョン)にあるGachon University Gil Medical Center NICUの孫教授が当院NICUへ見学にきて下さいました。今回はフェローの先生や看護師さん達も加わって総勢5名でお越し下さいました。
ところが、特に2泊目となる10月11日の土曜日は青森市内で何かの集まりがあるのかホテルがどこも満室で、急きょ当院近くにある待機宿泊施設の「 ファミリーハウスあおもり 」に宿泊していただくことになりました。

初日、NICUと総合周産期母子医療センター全体をご案内した後、この日の深夜から2名の看護師さんが交代で見学されていきました。
一人目の看護師さんが23時から、二人目の看護師さんが朝の6時からで、孫教授はその都度「ファミリーハウスあおもり」から一緒に案内されていました。写真は早朝に二人目の看護師さんを連れてきて下さったところです。

この日はこの後、午前中の見学前に「ファミリーハウスあおもり」近くのフラワー温泉で温泉に入ってこられてきたそうで、こちらは当直明けの無精髭隠しでマスク中です。
この後、早産児の呼吸・循環管理に関して時間を忘れての延々と議論となりました。孫教授は本当に好奇心が旺盛な方で、当院での循環管理、特に神奈川こども方式と自称している当科の管理に関してかなり詳しいところまで興味を示して下さいました。

まだまだ時間が惜しいほどでしたが、こちらが当直明けと言うことで遠慮されてかお昼過ぎに一旦戻られ、その後、夜の部となります。午後は青森駅近くにある「 ねぶたの家 ワ・ラッセ 」をお勧めしたところ、早速行ってこられたそうで、とても喜ばれていました。
飲み会でも、また互いに時間を惜しむかのように延々と両施設での看護や医師の体制、ケアの仕方など話題は尽きません。そして何よりも人工呼吸管理ではステファニーを愛する二人ですので、その思いには国境はありません。ただ、惜しむらくは英語・日本語ともに堪能な孫教授に対して、こちらはかなりいい加減な英語での応対でしたので、何よりもその点が申し訳なかったところです。もっと英語でのコミュニケーション能力を高めないと行けないなとも痛感した2日間でもありました。

いつか孫教授のNICUを見学させていただきたいと思っています。
青森までお越し下さりありがとうございました。

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東奥日報夕刊の連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」も4回目となりました。今回は「たらい回し」の真実と題して、読売ジャイアンツの村田選手のお子さんのお話を取り上げさせていただきました。
連載は毎月第1・第3月曜日の夕刊なので、次回は10月20日の予定です。

以下、連載4回目です。
「たらい回し」という言葉がしばらく前にマスメディアを賑わせました。重症妊婦さんの緊急受け入れ先が見つからず治療が手遅れとなり、妊婦さんが死亡した事例が相次いだことに端を発しています。
当時、病院が患者さんを受け入れられなかった理由として、産科医師不足もさることながら、ハイリスクのお産で生まれてきた赤ちゃんの治療を行うNICU(新生児集中治療室)の病床不足の深刻さが、その背景としてにわかにクローズアップされました。最初の事件発生が2006年。08年から09年にかけてが報道のピークでした。
プロ野球の元横浜ベイスターズで現読売ジャイアンツの村田修一選手は多くの方がご存じかと思います。村田選手のご長男は06年に超低出生体重児で生まれました。
村田選手の奥様は妊娠23週を迎えたある朝、突然破水し、すぐにかかりつけ医を受診し母体搬送先を探しますが、居住地の横浜市内で受け入れ可能な病院はなく藤沢市の病院へ運ばれます。その後、息子さんは在胎24週712㌘で生まれ、すぐにNICUでの治療が始まりました。2月だったので村田選手は沖縄でのキャンプ中でした。
順調に経過していたかと思っていた矢先、生後1週間頃に超低出生体重児の重篤な合併症の一つで腸が破れてしまう「消化管穿孔(せんこう)」を発症し、非常に危険な状態となります。藤沢のNICUでは小児外科の治療ができないため、さらに高次のNICUへ搬送しなければなりませんが、またここで「NICU満床の壁」が待ち構えていました。
ここから先は当時の様子をまとめた単行本「がんばれ‼小さき生命たちよ―村田修一選手と閏哉くんとの41カ月(TBSサービス)」から抜粋します。
「それで、どこに搬送されるんだ?」
「受け入れ先がまだ見つからないの」
「目の前が真っ暗になった。神奈川や東京の手術まで可能なNICUはすべて満床で、(中略)手術を受けるためには、静岡県の大きなNICUに行くしかないかもしれないという。」
「受け入れ先の病院までは100キロ以上もある。」
「あんな小さな息子には100キロの道のりはきつすぎるんじゃないか。」
「しばらくしてから再び電話の着信音が鳴った。『神奈川県立こども医療センターが受け入れてくれることになった。』震えるような声で嫁が告げた。全身の力が抜ける気がした。」
当日の朝、こども医療センターのNICUはほぼ満床で、さらに双子の早産児が生まれる直前だったため受け入れが困難でしたが、たまたま片方の赤ちゃんがとても軽症だったので、幸運にも急きょ受け入れが可能となったと言うのです。この後、村田選手の息子さんはこども医療センターNICUによる懸命の治療が奏功し、今はすっかり元気にすくすくと育っていらっしゃいます。
こうした体験から、村田選手はヒットを打つ度に募金する「支えるん打基金」プロジェクトや、NICUから退院したお子さんたちを東京ドームに招待する「NICU観戦会」など、新生児医療への支援活動をされています。
村田選手は「NICUのベッドと人員の不足が、救えるはずの赤ん坊たちのいのちを危険にさらしている現状を、このとき初めて知った。」と書いています。こうした現状を多くの方に知っていただきたいと思っています。

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先週末は群馬県周産期医療学術講演会にお招きいただき「新生児人工呼吸器 今できること・できないこと・今後求められること」と題して人工呼吸管理に関してお話しさせていただきました。講演のタイトルは昨年の日本周産期新生児学会での人工呼吸管理シンポジウムと一緒ですが、群馬県のNICUではハミング系とSLE5000を持っているご施設が多いようだったので、内容的にはこれらの機種で「できること・できないこと」と、これ以外の機種で「できること」の解説が中心となり、ある意味「人工呼吸器購入ガイド」みたいな感じになってしまったかも知れません。
今は新青森まで新幹線がきているので、高崎までは大宮で乗り換えるだけなので意外に近いと感じました。

会場のホテルに到着すると窓の外から利根川を眺めることができます。

今回の講演内容は、これまでこのホームページにも掲載した内容がほとんどですが、今回「人工呼吸管理における輪作」と言う考え方を提案してみました。

輪作は同じ作物ばかり続くことにより土地が痩せるのを防ぐ効果があるようですが、人工呼吸管理でも同じ呼吸モードばかり使っていると、きっと同じ場所ばかり肺損傷するのではないだろうか?と言うところからの発想です。PAVが動いているところを見ていると、本当に吸気フローがゆっくりなのに酸素化が改善しますが、恐らくはPAVの場合だとそれぞれの肺胞が少しずつ分担して膨らんでいるのではないかと思わせられます。そんな様子を見ていると、きっと人工呼吸モードによって負担がかかる部位が違うのではないだろうか?そんなことを考えたりしています。今のところ何のエビデンスも根拠もありませんが・・・。
懇親会では主催者である群馬県立小児医療センターの丸山憲一先生をはじめとした群馬県の先生方と色々とお話しさせていただくことができました。群馬県立小児医療センターの先生方の名刺は皆さん、群馬県のゆるキャラである「ぐんまちゃん」のイラスト入りと言うか、「ぐんまちゃん」が名刺になっていました!


翌朝は群馬県立小児医療センターへ見学でお邪魔させていただきました。個人的には青森県にくる前は北海道立の小児病院(現コドモックルの前身です)での勤務が長かったので、小児病院はなんか懐かしい感じを受けました。


病院全体が増改築を繰り返されており、NICUも増床に伴う工事の影響で色んなスペースが不足されているとのことでした。最も驚いたのがNICU・GCUともに全ての病床の上にロールスクリーンが設置されており、それぞれがすぐに個室化できるようになっていたことです。これは空調・照明の位置関係を設計段階で分かっていないとできないことで、丸山先生にお聞きしたところ、やはり設計段階から考えられていたとのことでした。当院でもロールスクリーンによる個室化を考えたことはありましたが、工事の事前段階でここまで気がつかなかったので断念した経緯があります。


最後はNICUをバックに丸山先生とのツーショットです。
休日にもかかわらず院内をご案内下さりありがとうございました。


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