東奥日報夕刊の連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」は今週が9回目です。今回は女性の出産年齢の上昇の原因をお話しする前に、日本の少子化の背景に関して述べてみました。
以下、9回目の原稿です。
前回、なぜ出産年齢がどんどん上昇しているのか、その理由について読者の皆さんに宿題を出しました。今回はその答えの前に、女性の出産年齢の上昇と切っても切れない日本の少子化の背景について簡単に説明したいと思います。
我が国の出生数は終戦直後に激増し、「第一次ベビーブーム」が出現します。当時の年間出生数は約270万人。この時生まれた赤ちゃんが「団塊の世代」で、1971年から74年にかけての「第二次ベビーブーム」における母親世代の中心となります。第二次ベビーブームの年間出生数は200万人台で、現在のちょうど2倍に相当します。これが「団塊ジュニア世代」です。
1960年代から70年代中頃まで2.0前後で推移していた合計特殊出生率は、第二次ベビーブームが終わる頃から低下傾向となり、それに伴って出生数も減少します。ちなみに66年は、60年に一度回ってくる干支の一つ「丙午(ひのえうま)」という年に当たり、この年に生まれる女性は気性が荒いという迷信から、出産が控えられ、一時的に合計特殊出生率は1.58に大幅減少しています。
その丙午を下回る1.57を記録した89年は、「1.57ショック」と言われ、少子化の危機感が漠然とながらも社会に認知され始めました。2005年には1.26と戦後最低水準を記録し、その後1.4前後と若干持ち直しているようには見えますが依然低水準で推移しています。
ちなみに、合計特殊出生率とは「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」で、一人の女性が一生の間に産む子どもの数に相当します。ただ実際には、例えばある世代の女性が49歳になるまで値が分からなくては実用的ではないので、その年ごとの各年代別の出生率を合計した値(「期間」合計特殊出生率)が一般的に「合計特殊出生率」として用いられています。また、人口を維持するための出生率の基準を「人口置換水準」と呼び、その値は2.07と言われていますが、これを下回り続けた分だけ将来の人口が減っていくことを意味します。
何より出生総数自体が年々減っていることが問題です。これは母親となる女性の人口が団塊ジュニア世代をピークに減少傾向にあることに起因しています。
出産数の中核となる現在20~39歳までの世代の出生数(図中の枠内)を見ると、団塊ジュニア世代から右肩下がりになっていることが分かります。この枠は今後1年ごとに右に移動して行きますので、出産数の中核となる世代の女性人口は、年々減少していくことも図から読み取ることができます。
国が発表する出生数の将来予測はかなり悲観的な数に感じられるかも知れませんが、「20年後のお母さんとなる世代はすでに生まれてしまっている」ので、少なくとも今後20年間に関しては実はかなり正確に予測可能な指標と言えます。年明けになって公表された2014年の出生数は100万1000人と、辛うじて100万人台を維持しましたが、恐らくこれは我が国の出生数100万人台の最後の年となることでしょう。
そしてもう一つ。この図から言えることは「少子化対策による出生数の回復は早ければ早いほど効果的である」と言うことです。お母さんとなる世代の女性人口が減ってしまってからでは、多少合計特殊出生率が上がったところで追いつかない日がやってきます。「少子化対策は時間との闘いである」と言うことを、今回は強調したいと思います。