今日は公明党大阪府議会議員団の皆さんが当院のNICUと成育科の視察のために当院までお越し下さいました。
「なぜ大阪の議員さんが青森まで?」と思われる方がほとんどと思いますし、私自身も今回の視察の打診を頂戴したときには驚きました。実は当科のこのブログをご覧になってご興味を持って下さったそうで、周産期医療にとどまらず 小児在宅医療に関して東奥日報で連載している内容 に関して関心を持たれたとのことでした。
NICUの方のご案内は池田先生にお願いして、現状に関して説明してもらいました。
青森県の周産期死亡率が集約化によって顕著に改善した経緯をご説明し、その上で死亡率が低下したことで、助かったお子さん達に様々な後遺症があり、こうしたお子さんに対して十分な支援が行き届いていない現状に関してお話しさせていただきました。
そして、中でも小児在宅医療の問題に関しては、今や共働きが当たり前の時代に、お子さんに障害があるために働けないことは経済的不利益が大きすぎること、さらには「女性が働く」と言うことに関して根本的に考え直さなければならない時代になっているのではないかと言う点に関して、 東奥日報明鏡蘭への投稿 を通じてお伝えしました。
赤ちゃんを産むお母さんの平均年齢は初産ですら30歳を超えており、第2子以降も全て平均すると、大卒としても約10年ぐらいの社会人としてのスキルがあるはずで、それがお子さんに障害があった時点で、それまでのスキルを水泡に帰してしまわざるを得ないと言うのは、いくら医療費の削減に貢献しているとしても、社会全体としては非常に非効率なことをしているのではないかと思います。
そして、さらには政府は「全ての女性が輝く社会」をスローガンに掲げています。このスローガンの本気度を計る上でも障がい児のお母さんが働けるまでに支援を充実できるか否かが一つの目安になるのではないかと思います。
ただ、それではどのようにしたらこの問題を解決できるか?と言うのが、具体策がまだまだ見えていないのではないか?おそらくはこうした問題を解決するためのヒントを探るために、わざわざ遠路青森までお越し下さったのではないかと感じました。
そして、その答えは先日来ご紹介している横浜市の能見台クリニックの小林先生の取り組み( 6月8日 メディカルデイケアとは?~横浜・ケアハウス輝きの杜 ) に尽きるのではないかとお伝えしました。
重症心身障害児のお子さんは全国各地にいらっしゃいます。いずれにしてもデイケアの充実が必須なのですが、これが例えば大きな都市にある障害児施設だけにデイケア施設が整備されても、大きな街へのアクセスが困難なご家族はその恩恵を受けることができません。その点で、こうしたクリニックで例えば数人でも預かってくれるようになれば、クリニックは全国各地にありますので、これはものすごく大きな変化が起きるのではないか?、そしてそのためにはデイケアに対する報酬が現行制度ではまだまだ不足ですので、まずは経済的支援が不可欠であり、さらにはクリニック内にそうしたスペースを作るにもコストがかかりますのでイニシャルコストに対しても支援があれば、急激に支援の輪を拡大させることができるのではないかと言う現在の考え方をお伝えしました。
議員の皆さんは本当に終始真剣に耳を傾けて下さいました。そして、口々に「はるばる青森まで来た甲斐があった」と仰って下さいました。今回の視察が障がい児を育てていらっしゃるご家族への支援に少しでもつながってくれることを心から願っております。
公明党大阪府議会議員団の皆さん、この度は本当にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
(文責 成育科 網塚 貴介)