2016.12.31
今年も 昨年に続いて アクセスランキングを出してみました。今年も英語版ページも含めてのランキングにしてみました。まず総アクセスビュー数ですが、2016年は112,342件と2015年の134,530件にはややおよばなかったものの、今年は昨年の 「 NICU当直1000泊目! (2014年5月9日、10,141件)」 のように飛び抜けた記事はなかった割には比較的安定したアクセスがあったように思います。それでは以下に10位までのアクセスランキングをお示しします。
1位
SiPAP(英語版) (2014年1月30日、3,881件)

今年の1位は昨年も2位だったインファントフローSiPAPの英語版が年間を通して安定したアクセスを記録しました。
2位
Babylog VN500 (Basic) (2,261件、2014年2月8日)
2位は1位に続いて英語版ページ にあるBabylogVN500(Basic)でした。これらは以前、NeonatalCareで連載していた「クセとコツをらくらくマスター 人工呼吸器フル活用マニュアル」の内容をそのまま英訳したもので、2013年頃から作り始めて、昨年の夏頃に完成しました。それ以降は特に手直しもしていないのですが、3年経った現在でも世界中からそれなりの件数のアクセスがあるようです。
3位
「一人飲み」アンケート2015~日本周産期・新生児学会in富山 その5
(1,972件、2016年7月21日)
3位は 「一人飲み」アンケート2015~日本周産期・新生児学会in富山 その5でした。ここでようやく通常記事が登場です。このブログ記事はTwitterにもアップしていますが、「一人飲み」関連はリツイートが多い傾向がありますので、アクセス数もTwitter経由が多いのかもしれません。
4位
早産児の人工呼吸管理Part2 (1,382件、2014年5月14日)
4位は昨年9位だった早産児の人工呼吸管理Part2 が入ってきました。この後にも続きますが、今年は早産児の人工呼吸管理シリーズが多くの方に読んでいただけたようです。
5位
新型人工呼吸器登場!NAVA(1,302件、2014年5月16日)
5位にはNAVA(Neurally Adjusted Ventilatory Assist)と言う全く新たな呼吸モードを紹介した記事が入ってきました。この記事も一昨年の人工呼吸管理関連としてアップした記事でした。
6位
早産児の人工呼吸管理Part3(1,262件、2014年5月20日)
7位
東奥日報連載35回目 「一人飲み」㊤~新生児医療現場の「悲鳴」
(1,245件、2016年8月18日)
7位は 東奥日報連載の35回目でやはり「一人飲み」を取り上げた記事がランクインしました。
8位
早産児の人工呼吸管理Part5 (1,156件、2014年5月22日)
9位
Babylog VN500(Advance)(1,124件、2014年2月8日)
10位
9月17日の報道特集~医療ケアが必要な子を育て働くことPart5 (951件、2016年9月17日)
9月17日の報道特集で「医療ケアが必要な子を育て働くこと」をテーマにした特集が放送され、それをまとめた記事が10位にランクインしました。この記事にはこれまでの医療的ケア児関連記事を一挙にまとめています。
以上、今年のアクセスランキングをまとめてみましたが、今年の特徴としては2014年頃にまとめた 人工呼吸器の英語版ページ と 人工呼吸管理関連記事 に年間を通じてコンスタントなアクセスがあり上位に入ってきていました。それに加えて、通常記事では「一人飲み」関連記事に対する関心が高かったように思います。
来年も身近な話題をご紹介させていただきたいと思います。
新年まであとわずかですが、皆様、よいお年をお迎えください。
(文責 成育科 網塚 貴介)

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2016.12.24
横浜で講演ダブルヘッダー&「逃げ恥」ロケ地巡り の続きです。

(画像をクリックすると「がんばれ!!小さき生命(いのち)たちよ」のページにリンクします)
今回は「NICUにおける母子分離軽減~日本における問題点と可能性」と題してお話しさせていただきました。内容的には今年7月の富山での 日本周産期新生児学会教育セミナー のフルバージョン的で、当院の直母外出の取り組みに始まり、 今年5月にオランダで見学させていただいた2施設 のことも教育セミナーの時よりも詳しくお話しさせていただきました。





当院の直母外出の詳細は以下の本に詳しく掲載されていますので、是非、ご参考にしていただければと思います。

ここからが本論です。
オランダのOLVG病院の看護スタッフの人員配置は、最重症のNICUやMFICU対象の患者さんこそ看護師さん一人あたり1~2人と日本とは比べものにはなりませんが、中等症以下の患者さんの配置は日本とそれほど大きな違いはありません。むしろ違いで大きいのは病室の面積です。日本の病室面積基準は成人でも決して広いとは言えませんが、小児病棟ではさらにその3分の2の面積でも良いことになっています。NICUには1床あたり7㎡という面積基準があり、それでも海外の施設と比べると話にならないぐらい狭いのですが、GCUに至っては狭い病室に所狭しとコットが並ぶ光景が当然のようになっています。
これではご両親と一緒にいるスペースどころの話ではありません。
個人的には、この小児入院患者に対する面積基準が、GCUにおけるファミリーセンタードケアを進める上でも、また小児病棟においてご家族が付き添いする上での環境の悪さや、その逆に小児病院ではご家族が付き沿う場所すらないこのなど、全ての元凶となっているのではないかと考えています。
以前から「一人飲み」に着目して我が国の現状を調べてきましたが、実はこの「一人飲み」とファミリーセンタードケアは表裏一体なのではないかと考えています。
当院では直母外出によって、特にLate preterm(後期早産)児の入院期間がかなり短いのが特徴です。一方、「一人飲み」をしている施設も全国の半数ほどあるのですが、そもそもスタッフが抱っこする必要もなくほ乳瓶を立てかけて哺乳ができる赤ちゃんがなぜ入院していなければならないのか?と言う素朴な疑問が起きてしまいます。
そんなに哺乳が上手なら退院できるはずなのでは?
それが退院できないのは、とりもなおさずご家族の方の準備ができてないのが理由なのでは?
と思うのです。しかし、ご家族に退院準備をしてもらうのにも人手がかかります。つまり看護スタッフの人員配置不足は入院期間の長期化の原因となっている可能性があるのではないかと言う話を、勉強会後の懇親会でしていました。制度を変えるにはそれなりの根拠が必要です。今後は、こうしたことも検討材料とした上で適正な看護師配置を目指して行く必要があるのではないかと考えています。
(文責 成育科 網塚 貴介)

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2016.12.23
先週木曜日は神奈川県立こども医療センター新生児科の豊島先生から新生児科講演会にお招きいただき、今回は「NICUにおける母子分離軽減~日本における問題点と可能性」と題してお話しさせていただきました。横浜市へは今年はこれで3回目のお招きとなります。本当にいつもありがたいと思います。

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今回はこれに加えて、神奈川こどもでの講演会の前に、 横浜市立大学附属市民総合医療センター で人工呼吸管理に関する勉強会でもお話しする機会を頂戴しました。これは今月上旬に大阪で開催された 第61回日本新生児成育医学会 の懇親会後にこちらの西大介先生に人工呼吸管理に関してあれこれお話ししているうちに「22日に横浜に行くので、そのついでに勉強会いかがですか?」となかば押し売りみたいな形でお邪魔させていただくことになりました。
市営地下鉄を降りて歩いていくと立派な病院がそびえ立っていました。

横浜市立大学附属市民総合医療センター と言えば、 新生児医療フォーラム で昔からお世話になっている関先生のご施設です。


横浜市立大学附属市民総合医療センター でのお話が終わって、すぐに神奈川こどもへ直行です。神奈川こどもはイルミネーションや飾り付けがすっかりクリスマスムード一色でした。



神奈川こどもでの講演会の内容はまたあらためてご紹介させていただきたいと思います。

講演会終了後は桜木町に繰り出して懇親会を開いていただきました。写真は懇親会出発前の1枚です。ちょうど今月から当院の矢本先生が神奈川こどもで短期研修させていただいている最中でした。豊島先生、横浜市立大の西先生もご一緒していただきました。

やっぱり横浜の街はいつきてもきれいですね。

懇親会でも講演会でお話ししたファミリーセンタードケアに関してあれこれ話題は尽きません。この辺もあらためてご紹介します。

さて、本来ならここでホテルに帰るところですが、せっかくのクリスマスの横浜ですし、今話題のドラマ 『逃げるは恥だが役に立つ』 の舞台もみなとみらい付近ということで、当日はかなりの突風をともなう雨模様でしたが簡単にロケ地巡りをしてきました。
こちらは日本丸メモリアルパーク近くの「北仲橋」で、ドラマ中にはここからのみなとみらいの夜景とともに頻繁に登場していました。


こちらは第10話で待ち合わせ場所になった象の像がある「象の鼻パーク」の入り口付近です。もう少し先まで行きたかったのですが、あまりの悪天候に泣く泣く退散しました。

こんな貴重な機会をいただけたことをとてもありがたく感じた1日でした。
(文責 成育科 網塚 貴介)

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2016.12.22
東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が39回目でした。今回は産科病棟における新生児の扱いの問題を取り上げてみました。ショッキングなタイトルかとは思いますが、これがまた現実でもあります。まずはご覧いただければと思います。

以下、本文です。
日本では病院や診療所といった医療機関での施設分娩(ぶんべん)がほとんどです。ただ、産科病棟で生まれる赤ちゃんの位置づけはかなり「グレー」なものがあります。
生まれてすぐに明らかな異常が見られない赤ちゃんは、病気ではないので正規の入院患者とはみなされません。もちろん、産科の助産師さん、看護師さんは赤ちゃんのケアを行うのですが、それはあくまで正規の入院患者であるお母さんのためのスタッフであって赤ちゃんのために配置されたスタッフではありません。診療記録(カルテ)に関しても、赤ちゃんの記録をお母さんのカルテに記載する施設も多く、その扱いは医療機関によってさまざまです。
こうした現状に対し、日本未熟児新生児学会(現日本新生児成育医学会)は、2012年に出した「正期産新生児の望ましい診療・ケア」の中で、赤ちゃんが「母体の付属物として扱われている」と指摘した上で、産科で生まれた赤ちゃんの診療の基本として、「1.新生児用の診療記録(カルテ)を作成する」、「2.母親の看護とは別に、新生児のために適切な看護師・助産師を配置する」ことを求めています。
また、米国小児科学会のガイドラインでは、看護師・助産師の配置は赤ちゃん6~8人に1人、または健康な母子3~4組に1人が望ましいとしています。赤ちゃんの観察については「生後2時間安定した状態が続くまで少なくとも30分毎(ごと)に評価して記録する」と提言しており、「正期産新生児の望ましい診療・ケア」でもこの提言を支持しています。
一方、2014年に日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が出した「産婦人科診療ガイドライン─産科編2014」では、「生後早期から退院までの新生児管理における注意点」の中で、「体温、体重、呼吸状態、哺乳状況、活動性、皮膚色(黄疸(おうだん)、チアノーゼ等)を定期的に観察する」との表現にとどまっており、赤ちゃんのカルテの作成やスタッフ配置には言及していません。
実は、赤ちゃんの看護体制に関して、産婦人科サイドと小児科サイドで見解の相違があるのが実情です。背景には、赤ちゃんにまでスタッフを配置することの経済的問題や看護師・助産師の不足、さらには赤ちゃんを正規の入院患者にすると病院や診療所のベッド数の問題にまで広がるなど、さまざまな要因があります。
前回、生後すぐのカンガルーケアに際して、スタッフがいない環境で事故が起きていることを紹介しましたが、医療機関におけるこうした「グレー」な扱いこそが、赤ちゃんに目が届かない背景となっているのです。
生後間もない赤ちゃんは元気に生まれてきたとしても、まだまだ不安定な状態です。カンガルーケアをしていなくても、赤ちゃんの急変や死亡事故は起きています。
以前、生後数時間で亡くなった赤ちゃんが新生児室で泣いている時期、つまり亡くなる少し前の様子を動画で見せていただいたことがあります。赤ちゃんは鍵のかけられた新生児室のベッドに寝かされ、スタッフは休憩中でした。ガラス越しに面会していたご家族が、心なしか赤ちゃんの泣き声が徐々に弱々しくなって、少しして動かなくなり、おかしいと感じて休憩中のスタッフを呼びに行ったときには手遅れでした。
泣き声が弱くなり始めた頃、ちゃんと診察をして呼吸数や心拍数、顔色を観察していたら経験のあるスタッフであれば異変に気づいたことでしょう。
こうしたことは頻繁に起こることではありません。しかし、一定のルールにのっとって観察していれば、すべてとは言えなくても、助かる命もあります。何より大切なのは、赤ちゃんも「一人の人間」として扱われることではないかと思います。
(文責 成育科 網塚 貴介)

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2016.12.11
今月10日には例年青森市内でこの時期に開催される第46回青森県周生期医療研究会がありました。


今回は特別講演として、東京成徳大学子ども学部教授の益田早苗先生をお招きして「予期せぬ妊娠・出産への支援ー新生児養子縁組への取り組み」と題してご講演いただきました。

実はこの前日である12月9日は「養子縁組あっせん法」が衆院本会議で成立したばかりというかなりタイムリーな話題でした。特別養子縁組とは様々な事情で実の親が育てることができないお子さんが家庭で養育できるようにするための制度で、養子は戸籍上養親の子となり、実の親との親子関係がなくなる点で普通養子縁組と異なります。年齢も原則として6歳未満と定められています。
これまで特別養子縁組には児童相談所もしくは民間の支援機関がその任にあたっていましたが、特別養子縁組がなかなか進まなかったり、支援機関の質などが問題視されてきました。予期せぬ妊娠・出産によって生まれた赤ちゃんの中には虐待を受けたり、乳児院に収容されてもその後の人生において貧困が連鎖するなどの問題があり、今回の法整備は各方面から期待されていたそうです。
ただ、個人的には以前、このブログでもご紹介しましたが、今から約2年半前のNHKスペシャルで女性の貧困を取り上げた特集があり、それに対して 子どもを大切にしない国に未来はあるか?「NHK 女性たちの貧困」から思うこと という記事を書いたことがあります。
以下は、その記事をそのまま引用します。

4月27日(日)のNHKスペシャル「 調査報告 女性たちの貧困~”新たな連鎖”の衝撃~ 」が放送されました。この放送をご覧になって衝撃を受けられた方も多いと思います。少し前の番組ですが、この番組を見ていてどうしても納得の行かない点があったので、今更ながら取り上げてみたいと思います。

番組では働く女性の約6割が非正規雇用で、非正規で働く15歳から34歳までの若年女性の8割以上が年収200万円未満で全国に289万人いると紹介されていました。これはこれで問題ですが、今回気になったのはその後の部分です。
この貧困の中、貧しさから我が子を手放さなければならない女性がいると言うのです。

この図では「こどもを手放す理由」の半数以上が経済的理由となっています。性犯罪など、母親がわが子を受け入れられない場合は別として、経済的理由と言うことは母親自身にこどもを育てる希望があるのに叶わないと言うことを意味します。実際、番組中のインタビューでも自分のような人生ではかわいそうだから、新たな両親に託したいと言う思いが語れていました。

「経済的理由から女性がこどもを手放す」と言うのはあくまで女性の側から見た表現で、こどもの立場から見れば「親に経済力がないとこどもは自分の親に育ててもらう権利がない」と言うことを意味します。しかし、直感的にもこの現実はどこかおかしくないでしょうか?
日本は1994年に 子どもの権利条約 を批准していますが、子どもの権利条約の第7条の1に
「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」
とあります。つまり、こどもの立場からみれば、彼らにはこの世に生まれ落ちたその時から「その父母によって養育される権利」があるのです。
ここで誤解のないように付け加えておきますが、今回の番組で紹介されていた特別養子縁組を仲介するNPO法人の方の活動に関して、個人的にはこうした活動はとても尊く、現実に「こどもの権利」が守られていない現状がある以上、「こどもの権利」を守るため、この日本社会にはなくてはならない存在なのではないかと考えています。
番組では女性の貧困問題に関し、国の成長戦略と結びつけて制度間の連携や制度の刷新の必要性が語られていました。しかし、そんな損得でばかり語られるべきものなのでしょうか?

番組では今回の問題への対処を日本社会の持続可能性の分岐点としていましたが、 国の少子化対策 も含め、どうも経済や社会の都合ばかりが優先され、肝心のこどもの立場がすっぽりと抜け落ちているのではないかと言う点を危惧しています。
当科の医師の研修でお世話になっている神奈川県立こども医療センター新生児科の豊島勝昭先生は「 こどもを大切にしない町や国に未来はこない 」が口ぐせですが、今回の番組を観ているとまさにその通りと思います。少子化、少子化といくら騒いでみても、大人達の都合ばかりを優先している社会に明るい未来があるとはとても思えません。
「こどもを大切にしない町や国に未来はこない」
この国の未来考える全ての人に、この言葉をいつも心に唱えて欲しいと思います。
引用終わり
益田先生のご講演の後
「2年半前のNHKスペシャルで女性の貧困が取り上げられ、そこでは子どもを手放す理由の半数が経済的理由とあったが、この法案の成立によって、自分で育てたくても経済的理由でそれが叶わない女性から子どもを取り上げることにはつながらないのか?」
「先天的な疾患や早産児などで出生した児たちが差別をうけることはないのか?」
この2点に関してご質問させていただきました。
これらの点に関しては、今回、この法案は成立したけれども、2017年4月の法律施行に向けたガイドライン作成がこれからア行われるので、そうした中で様々な議論がなされることになるでしょうとのことでした。
個人的にこの法案に反対なわけではありませんが、運用を一つ間違えると取り返しのつかない制度であることを十分自覚した上でしっかりした制度設計をしていって欲しいと願っています。益田先生、大変勉強になりました。ご講演に心より感謝申し上げます。
(文責 成育科 網塚 貴介)

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