12月最初の週末は青森市内で青森県医師会主催の母体保護法指定医研修会にお招きいただきました。
今回の研修会は3部構成となっており、まず最初に医療安全として、当院院長である藤野安弘先生から「医療安全文化醸成のために何をするべきか?」と題してご講演されました。
最後は生命倫理分野と言うことで、岩手医科大学臨床遺伝学科の福島明宗先生から「出生前診断からみた生命倫理」と題してご講演されました。
私は両先生の間で2番手で、生存限界周辺である在胎22~23週の医療に関してお話しさせていただきました。
今回の研修会では、これまでの青森県における周産期医療の変遷に関して概説し、かつてよりも多くの小さな赤ちゃんが救命されるようになったこと、しかもその長期予後も以前よりもかなり進歩していることをお話ししました。それでも、生存限界ギリギリの早い週数で生まれたお子さんの予後はまだまだ厳しいものがあります。これまでの当院での経験を元にこうした早い週数での出産が現実となったご家族へどのように考え対応してきたかに関してお話してみました。
こうした現実に直面したご家族を支えるために重要なのは、
1)正確な情報提供
2)現実を受容するための心理的支援
3)児に対する愛着形成の支援
であると考えています。正確な情報提供とは、ただ説明したと言うことに留まらず、ご家族がしっかり理解されることが重要です。また、極めて厳しい状況に陥った場合にはご家族による意思決定が必要になりますが、意思決定するにも現実を受容できていなければそれどころではないでしょう。さらには、赤ちゃんがNICUに入院となってからは、ファミリーセンタードケアを中心としたご両親が第一の養育者となるべくエンパワーメントしてくようなケアが必要となります。
重要なことは、どのような決断をされても、どのような経過となっても、ご家族がその先の人生を前を向いて歩んでいけるように支えることが私たち医療者に求められていることなのではないかとお話ししました。
実は、このまとめは先月の日本新生児成育学会最終日に行われた市民公開講座「コウノトリ先生が教えてくれたこと」で、神奈川県立こども医療センターの豊島先生がお話しされていた内容からいただいたものでもありました。
豊島先生はこの公開講座の中で、「どんなに医療が進化しても悩みは生まれてくる」「医学の進歩の中で戸惑うご家族に心寄せたい」と語られていました。
新生児医療の最前線からはすでに引退した身ではありますが、これまでの経験が受講された先生達の少しでもお役に立てればありがたいと思いながら、この日の任を終えました。
(文責 成育科 網塚 貴介)