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成育科ブログ

2016.11.24

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東奥日報夕刊の連載 「知ってほしい赤ちゃんのこと」 は今週月曜日が38回目でした。今回は出生直後のカンガルーケアの話題を取り上げてみました。まずはご覧いただければと思います。

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以下、本文です。

「カンガルーケア」という言葉をご存じでしょうか?
一般的には、NICU(新生児集中治療室)に入院中の赤ちゃんを、主に両親が胸の上に抱っこして直接肌と肌を合わせるケアの総称です。
NICUに限らず、分娩室で生後間もない赤ちゃんがお母さんと肌と肌を合わせるのもカンガルーケアに含まれ、こちらは正確な用語としては「早期母子接触(early skin-to-skin contact)」と呼ばれます。
生後間もなくからのカンガルーケアは、母乳分泌促進や、母子の不安軽減に効果があるとされています。WHO(世界保健機関)や米国小児科学会のガイドラインでも、健常な新生児は出生早期から母の胸でカンガルーケアすることが勧められています。
一方で、日本国内では出生直後のカンガルーケアの最中に呼吸が止まったりして、赤ちゃんが亡くなったり、重篤な後遺症を残したりする事故があり、マスメディアでも取り上げられています。
一部にはカンガルーケアと呼べないようなものまで含まれていて、一括りにできない部分もありますが、最大の問題は赤ちゃんの状態が急変した時、スタッフが誰もいない場合が多いという点です。
例えば、出産が終わって「はい、赤ちゃんですよ~」とお母さんの胸の上に赤ちゃんを乗せた後、次のお産に向かったり、他の患者さんからの呼び出しでスタッフが不在になるような状況です。
生まれたばかりの赤ちゃんは、生後6時間から半日ぐらいまでは、子宮内環境から出て外の世界で自力で呼吸をして生きていくための適応過程にあり、元気に生まれてきたとしても不安定な時期です。
生後間もなくから状態が急変する先天性の疾患が隠れている場合もあります。近年は超音波検査による胎児診断が進んでいますが、見つけられる疾患はまだごく一部にとどまります。
生後早期の赤ちゃんの急変は、カンガルーケアをしなくても発生します。ケアをした場合としなかった場合の赤ちゃんの急変の可能性を調べた全国調査もありますが、確率に差がないことが明らかになっています。つまり、カンガルーケア自体が危険なのではなく、問題はスタッフの不在にあると言えます。
そもそも、カンガルーケアが本来の効果を発揮するには、お母さんが安心できる環境で行うことがとても大切です。言葉にしなくても、「スタッフみんなで見守っていますよ」というメッセージが伝わってはじめて、お母さんは心から安心してわが子を抱けるのです。逆に、スタッフも誰もいない不安な中では、形だけのものになってしまいます。
スタッフがそばにいることは、赤ちゃんの観察にとどまらず、カンガルーケア本来の意味からも必要なことで、つまり、「カンガルーケアを行ったか」よりも「信頼できる人がちゃんとそばにいたか」「赤ちゃんを観察していたか」が重要だということです。
そうしたことから、2009年、国内の有志の医師たちが、カンガルーケアガイドラインを作成しました。そこでは、家族への十分な事前説明と、機械を用いたモニタリングおよび新生児蘇生に熟練した医療者による観察など、安全性を確保した上での実施を勧めています。
しかし、医療スタッフはいつも多忙で、そこまでの対応がなかなかできないのも事実です。次回はその背景についてご紹介したいと思います。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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