昨日は平成27年度青森県周産期救急救命搬送講習会で県内の救急隊員の方達に新生児蘇生とお産の講習を行いました。

まず午前の部は新生児蘇生からでした。最初にNCPRを中心としたお話しをさせていただきましたが、救急隊の方達が実際に立ち会う自宅分娩等の現場では満足な物品も揃っていませんので、その辺を少々修正した形でお話しさせていただきました。

講義の後は実習です。講義1時間、実習1時間なので、とてもフルコースのNCPRはできませんが、それでもマスク&バッグと胸骨圧迫の手技までを各消防署から2名ずつのペアでやっていただきました。さすが救急隊の皆さん、かなり手慣れていらっしゃって驚きました。


午後からは産科の分娩に関する講義です。今回は健生病院の齋藤先生も講師として駆けつけて下さいました。


終了後の集合写真です。

当日はマスメディアの方達も取材にいらっしゃっていました。写真はABAの夕方のニュースです。

NCPRを手伝ってくれた越後谷先生もちょっとだけ映っていました。

こちらはデーリー東北の記事です。

以前は周産期医療と救急医療は厚生労働省の担当部署が異なっていたため、我々と救急隊の方達の連携はなかなか難しかった時代があったのですが、平成22年度から周産期医療も厚生労働省の医政局に組み込まれたことから、通常の救急医療と周産期医療を一体化して取り組むことが可能となりました。今後も救急隊の方達とより深い情報交換を進めていければと思っています。参加された皆さん、大変お疲れ様でした。
今年2月に 福島県NICU情報交換会 にお招きいただき、人工呼吸管理に関してお話しさせていただきました。

この度、福島県立医科大学の先生方から当科への見学のご依頼があり、先週、今週、さらに来週の3週続けて3名の先生が見学に来て下さいました。
第一弾の先週は、福島県立医科大学から氏家先生と羽田先生が2泊3日で来て下さいました。


そして第2弾の今週は金井先生が来て下さいました。金井先生は以前、神奈川県立こども医療センターへの短期留学にも行かれたことがあるそうです。


福島県の先生方には、国立福島病院の氏家先生をはじめ、本当に多くの先生方と交流させていただいております。今後も同じ東北地方同士、様々な形で交流を続けさせていただければと思っています。また来週もお待ちしております。
東奥日報夕刊の連載「知ってほしい赤ちゃんのこと」は今週月曜日が18回目でした。
今回は小児医療費助成の自治体間格差問題を取り上げてみました。
青森県は乳幼児医療費助成制度が自治体間でかなりの差はあるものの全般的にみれば非常にpoorです。本文中に示した扶養家族が1名の場合の所得制限額272万円と言うのは、この制度自体における最低基準額に相当します。青森市以外の市部が全てこの水準なのですから県全体でみると全国でも最低レベルなのではないでしょうか?本文中にも書きましたが、パリビズマブ投与に際して医療費のことをこと細かく説明しなければならないことを県外の先生方にお話しするとかなり驚かれます。
「親の所得によって子どもが適切な医療を受けられない社会」
これが青森県の現状です。あらゆる制度で子どもの立場・権利からの視点が抜け落ちている気がします。
ご参考までに本文中にある当科で調査した自己負担額のスライドをお示しします。



以下、連載18回目本文です。
今回は本県の小児医療費の問題がテーマです。小児の医療費は一般的に成人に比べて高額になりにくい分野です。治療期間が長くなる「小児慢性特定疾患」に該当する場合は、医療費の大部分が無料になるなど、医療費が抑えられる制度もあります。しかし近年、子ども向けの高額な薬剤が登場し、医療費が高額になるケースが出てきています。
皆さんは「RSウイルス」と言うウイルスをご存じでしょうか? このウイルスは秋から春にかけて、特に冬期に流行し、お子さんは2歳までにほぼ100%感染するぐらい、とても一般的なウイルスです。通常は発熱・鼻汁などを伴う上気道炎を発症し、数日で自然に治ります。ただ、このウイルスは早産児の場合、生命にかかわるほど重篤化する場合があります。赤ちゃんはへその緒を介してお母さんから感染症に対する抵抗力となる抗体(これを「移行抗体」と言います)をもらいますが、早産児の場合、この移行抗体量が少ないため、成熟児であれば軽い上気道炎で済むところが、気管支炎や肺炎などの下気道炎まで進展するリスクが上昇します。
これに対して、RSウイルスによる呼吸器感染重篤化予防のための注射があり、早産児の場合、秋から春にかけて毎月1回注射することが望ましいとされています。ところが、この注射は小児に投与する薬剤の中では飛び抜けて高価です。乳児医療の自己負担分を仮に2割とすると、窓口負担は1回あたり3~5万円にもなります。これを毎月投与するわけですから、公的助成でもなければ、どのご家庭でも支払いは難しいでしょう。県病での調査では、この注射を双子のお子さんに1シーズン投与し40万円の自己負担が発生した方がいました。
小児の医療費は、全国的に医療費助成制度により無料化の方向性にあるものの、制度運用は市町村に一任されており、居住地によってその運用は多様です。親の所得に関係なく無料化されている市町村もあれば、一定の所得制限が設けられている市町村もあります。
この所得制限も、かなり低い所得の方のみに設定されているか、ほとんどの家庭が対象となるかによって、まったく状況が違います。青森県の場合、市で所得制限がないのは黒石市とつがる市のみ。その他の市には制限があり、またそのラインが大きく異なります。例えば扶養親族が1人の場合、青森市の所得制限ラインは532万円ですが、その他の市では、青森市の半分以下の272万円ほどとかなり低めです。所得がこのラインを超えると、前述のRSウイルスに対する注射では毎月3~5万円の自己負担が発生してしまいます。
首都圏にお住まいの方が本県の某市へ転居された際、小児医療は無料と思い込んでいたところ、この注射の金額を聞いて転居後の投与継続を断念したというお話もよく耳にします。私たちもこの注射の説明をする際、どこにお住まいで、助成制度の対象になるかどうかの確認を必ず行うようにしていますが、そのような現状を他県の先生に話すと一様に驚かれます。
親の所得によってお子さんの医療に制約がかかってしまう社会は、誰も望まないのではないでしょうか? しかし、本県ではそれがすでに現実のものとなっています。
先日、昨年の人口動態統計が発表されました。本県の出生数は2009年に1万人を割り込んで以降も減少傾向が続き、昨年はついに8853人と9千人をも割り込んでしまいました。以前も述べたように、本県の出生数減少率は全国でも秋田県に次ぎ2番目に高く、この年間で約40%も減っています。人口減少による自治体の存続も危ぶまれる昨今、お子さんの医療費負担すら他県に大きく後れを取っていて良いものなのでしょうか?