週末の日曜日は、 はちのへファミリークリニック の主催で 「 はちのへ小児在宅医療フォーラム 」 が八戸市で開催され参加してきました。
最初のご講演は、人工呼吸器を装着しながら仙台市内の小中学校・高校を卒業され、さらに東北福祉大学に進まれて福祉の勉強をされた宮川智達さんが、これまで普通学級に通い続けていて感じたことに関してお話しして下さいました。このスライドにもありますが、大学進学を希望された時、受け入れてくれたのは東北福祉大学だけだったそうです。大学では「障がい学生サポートチーム」という学生ボランティアが支援方法をともに考えて下さっていたそうです。
さらに宮川さんは、障害者が普通学級に通う意義として、障害者とのふれあいが増えることが障害者に対する社会の認知の促進につながる点を強調され、将来的には障害者自身によって選ぶことのできる社会になっていくことを願っていると語って下さいました。
次のご講演は、声楽家を目指していた矢先、原因不明の神経難病を発症し、救命のため気管切開を余儀なくされながらも、歌手を諦めずに「気管切開をした声楽家」として活動されている青野浩美さんが、これまでのご経験を関西人らしいユーモアたっぷりにお話ししながら、何曲かの歌をご披露して下さいました。
青野さんの歌声の動画を見つけたので下にリンク先を貼っておきます。スピーチカニューレとはいえ、気管切開をされている方の歌声とはとても信じられないと言うよりも、そうした先入観抜きに素晴らしい歌声を聴かせて下さいました。中でも最後の方で歌って下さった『BELIEVE』は、青野さんご自身としても思い入れの深い曲だそうで、その歌詞の中にある「悲しみや 苦しみが いつの日か 喜びに変わるだろう」の一節が、まるで青野さんご自身の人生を見て作られたのではないかとさえ感じられたそうです。
青野浩美さん~『BELIEVE』 (クリックするとYouTubeへリンクします)
青野さんは、今回の特別講演のタイトルと同じ「わたし“前例”をつくります」と言う本も書かれており、さっそく購入しました。
お二人のご講演の後には「地域で安心して暮らしていくために」と言うシンポジウムが行われました。
八戸市民病院の小児看護専門看護師である奥寺さおりさんが、医療的ケアを有するお子さんの問題を的確にまとめられていましたのでご紹介します。
小児在宅医療では介護保険のケアマネージャーに相当する存在がいないためご家族自身がその役割を担わなければならない現状があります。また療養型施設は小児を対象とする施設が少なく、レスパイトもままならない状況です。
気管切開や経管栄養を要するお子さんの中でも運動面に問題がないお子さんの場合や、さらには糖尿病で自己注射を要するお子さんが就学した際、特別支援学校(養護学校)以外には看護師さんの配置がないため、ご家族が付き添わなければならないケースが多々ある実態をご紹介して下さいました。特に矛盾を感じるのは、まだ入学して間もない小学生でも「自立」と称して、自分自身で自己注射や気管吸引ができるようになれば親がいなくてもよくなりますが、小学生ができることを大の大人が制度が理由で何もできないと言うのは制度の矛盾にも程があるように思います。この点は東奥日報夕刊の連載で5月に 医療的ケア児のお母さんからの投稿を巡って~医療的ケアの本質的矛盾 として書いてきた矛盾点とも共通する点でもあります。
しかし、私たちもまたそれぞれの組織の中にあって、様々な制約の中で仕事をせざるを得ない現状があり、それは学校現場でも同じことなのだと思います。だた、制度は制度として、子供に関わるあらゆる職種の人達が自分自身にできることを一緒に考えてみませんか?と言う問いかけには、6月に 青森県総合学校教育センターで開催された平成28年度就学事務研究協議会でお話しさせていただいた時の思いと重なり、深く共感しました。
非常に内容の濃い、また多くの出会いもいただくことのできた一日になりました。参加された皆様とこのような素晴らしい会を企画されたはちのへファミリークリニック の小倉和也先生に心より感謝いたします。
関連リンク:
東奥日報夕刊連載「知ってほしい 赤ちゃんのこと」
(文責 成育科 網塚 貴介)