先日の 第120回日本小児科学会学術集会 in東京 でご紹介したように、先日東京で開催された日本小児科学会では「小児科医の将来像」のあり方に関する企画がとても目につきました。これからの小児科医のあり方として、実は日本小児科学会として既に 「将来の小児科医への提言2016」 として学会としての提言を出しています。その中で気になったのは)「コミュニティ小児医療」と言う言葉です。
先日の「少子化時代を迎え小児科医の役割はどう変わるのか」のシンポジウムで国立成育医療研究センター政策科学研究部の森臨太郎先生が「小児保健・医療提供体制2.0」と題してご発表され、その質疑の中でもCommunity Pediatricsと言う言葉として紹介されていました。
以下、「コミュニティ小児医療」に関して日本小児科学会のホームページ 「将来の小児科医への提言2016」 から抜粋します。下の図はこの提言の概念図です。
コミュニティ
提言:病院から地域,家庭へアウトリーチする.
テーマ:「地域での健康的な生活」
提案:
1)「コミュニティ小児医療」の学術分野としての確立
地域で生活する子ども,保護者やそれに関わる集団を対象に,子どもの健康に関する保健活動(禁煙,食育,性教育,障がい児(者)医療等)や在宅・訪問診療を実践し,これらを通じて育児に関わる種々の課題,子どもの成長発達や行動の特異性を学び,研究対象の
一分野と位置付ける(担当組織・委員会;学術,こどもの生活環境改善,小児慢性疾患など.新たな委員会の設立も考慮).
2)生涯教育
これは小児科医のキャリアの中で,生涯にわたり考え学び続ける必要のあるテーマである.そこでこれを学術分野として位置付けるために,まずは専門医教育から始める.
(担当組織・委員会:生涯教育・専門医育成,中央資格認定,試験運営など)
背 景:
衛生状態の改善や医療技術の開発・発展等によって,20 世紀から現在にかけて子どもたちの死亡率が著しく減少した.これからの私たちは,疾病治療から成長を支える医師へとなり,診療を受けた子どもたちが家庭,地域に戻り,そこで大人になっていくことを医
療面から支援する必要もある.
いままでも小児科医は保健活動を行ってきた.しかしながら,小児科学における学問的位置づけは明確ではなかった.また子どもたちに関わる課題は,家庭や保育,教育現場,さらには福祉施設を含む子どもの生活環境全ての場所で生じており,その内容も医療にと
どまらない.貧困に代表されるような社会問題も,家庭での療育能力の低下や,子どもの治療コンプライアンスなどに直結する問題である.
私たちは,視野を,病院から生活の場である地域(コミュニティ)へ,医療から健康・生活へと,コミュニティで生活する「すべての子どもたち」へ広げ,実際に病院の外へ出ていく必要がある.そのために,小児科医が「コミュニティ小児医療」を学術分野として位置づけ,子どもたちのアドボカシー(代弁者,権利擁護者,政策提言者)となって,これまで以上に子どもたちの健やかな成育を意識し,支援することを提言する.
(「将来の小児科医への提言2016」の全文は こちら からダウンロードできます)
引用終わり
この提言の「コミュニティ」のところを読んでいると、以前、院内広報誌「ふれあい」の中で 成育科のご紹介 として書いたこととかなりの部分で重なるように思いました。
急性期から慢性期へ
医療機関内から地域へ
小児医療の一つの分野として位置づけることと「アドボカシー」
これらは、これまで成育科として手探りでやってきたことが、基本的にはこれからの小児科医のあり方の模索にもつながっているのだと感じました。こうした方向性をこれからの世代の小児科医にも伝えて行ければと思います。
(文責 成育科 網塚 貴介)