11月の最終週は日本新生児成育医学会で鹿児島に行ってきいました。

会場は2014年に講演のため、今回の学会長である鹿児島市立病院の茨先生にお招きいただいた際に宿泊した城山観光ホテルです。


学会もいろいろありますが、中でもこの学会が一番忙しく、今回もあれこれたくさんミッションを抱えての参加です。まず初日は医療安全委員会主催のシンポジウムの座長から。

最初は東京女子医科大学東医療センターの長谷川久弥先生からNICUにおける母乳の取り違い防止システムに関してのご発表です。母乳は赤ちゃんにとっては栄養ですが、一方で体液でもあるため、別のお母さんの母乳が与えられることは感染症のリスクとなってしまいます。母乳の取り違い防止システムは、まだ大手電子カルテでは標準装備されていないシステムなので、各施設でNICU部門システムを導入して対処している施設が増えてきているようです。おそらく国内で最初にこの母乳の取り違い防止システムを導入したのが当院で、各所で発表したのを聞きつけて以前はかなり多くの企業の方も見学されていました。しかし、今回の長谷川先生のご発表をお聞きしていると、そろそろ追い抜かされてきているのかな?とも感じた非常に先進的な取り組みでした。

参考:第31回日本母乳哺育学会in盛岡 その2
続いて、国立病院機構九州医療センターの佐藤和夫先生からはNICUでのスマホ使用―医用電子機器への影響とマナーの問題と題して、倉敷中央病院の渡部晋一先生からは人工呼吸器回路など純正ではない器材を使用した際の注意点に関してお話いただきました。


会場を歩いていると、こどもかぞくまんなかのブースがありました。毎回、学会の度にブース出展され活動されていますが、今回は学会場のメイン通りに面していました。

夕方からはハイリスク児フォローアップ研究会に参加してきました。来年5月に青森市でハイリスク児フォローアップ研究会を開催する予定もあり、そのアナウンスもさせていただきました。

続いて新生児医療連絡会へ。今回は成田赤十字病院の戸石先生が今年の台風での千葉県の被害に関して、訓練と実際の違いに関してお話しして下さいました。

翌朝は、こちらも毎回学会の時に恒例となっている新生児医療フォーラムの管理人会です。打ち合わせ後に桜島をバックに集合写真と思いましたが、ちょっと逆光が強かったようです。

この日の午後からはポスター発表でした。タイトルは「新生児科医師の勤務状況と医師育成・供給に関 する調査―働き方改革対策の観点からの再考察」です。本学会の診療委員会で以前、全国の新生児科医を対象に勤務時間や当直回数のアンケート調査を行ったのですが、昨今の働き方改革を動きを踏まえて再検討したのが今回の発表です。結果から言えば、全国の新生児科医師は現在の医師数に加えて76.2%の増員が必要との結論になりました。

(画像をクリックすると拡大表示されます)
2日目の夕方は、鹿児島県内の今給黎総合病院が新しくなるのに伴ってファミリーセンタードケアを重視したNICU設計の展示があったので見てきました。

非常に正確に手作りされた模型で目を見張ります。

近くによって写真を撮るとミニチュアとは思えない精度です。

それでも後ろに立っている人と比較すると大きさの違いが分かります。開院はまだ先のようで、今回の学会には間に合いませんでしたが、とても楽しみな施設だと思います。

学会と言えば、朝も早いですが夜の部も。初日の夜は新生児医療連絡会主催の懇親会へ。全国の気の知れた先生方との語らいもまた学会の大きな楽しみのひとつです。懇親会もそろそろお開きと言うことで事務局長の大木先生がお開きの合図をして、最後に早川先生が万歳の音頭を取るところです。


2日目の夜は札幌医大の後輩の先生達とご一緒に。

最終日はお昼にランチョンセミナーがあり「新生児のフォローアップと支援 ~超低出生体重児から医療的ケア児まで~」と題してお話しさせていただきました。


ランチョンセミナーも終えて一息ついたところで桜島の方を見るとようやくくっきり見えました。

と思っていたのもつかの間、急いで帰路に就きました。毎度ですが怒濤の3日間でした。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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前日の災害時における医療的ケア児支援に関する講演会に続き、11月23日(土)には当院総合周産期センター主催の周産期医療学習会として、大阪発達総合療育センターの船戸 正久先生をお招きして「周産期における生命倫理について」と題してご講演いただきました。

その前座的に、学習会の前に同会場であおもり母乳の会勉強会で少子化対策に関してお話しさせていただきましたが、こちらはまた改めてご紹介したいと思います。

船戸先生のお話が始まります。


今回のご講演では、1)周産期の死と生命倫理、2)基本的緩和ケアは全人医療の基礎、3)退院後の対応と在宅医療支援、4)療育施設におけるEnd-of-life care支援とACP(事前ケアプラン)を4本柱にお話して下さいました。内容は非常に多岐にわたりかつ膨大なのでここで全てをご紹介はできませんが、最後のメッセージとして、
1)死は辛い悲しい出来事であることは間違いないが「死をタブー化」して悪い出来事にしてはならない。
2)「安らかな看取り」を提供することも、医療者の大切な役割(責務)である。
そして今後、医療現場の臨床倫理を考える場合、「協働意思決定」「事前ケアプラン(ACP)」キーワードとなるとお話しされました。
船戸先生は新生児科医の大先輩でもあり、さらに現在は療育や在宅医療の分野に取り組まれていて、その意味でも大先輩にあたる先生です。船戸先生のお話は、やはり最初は新生児科医としての目線から、そしてその後を支える立場からの視点と、個人的にも非常に共感できるお話でした。
学習会が終わる頃には夕暮れとなり、岩木山が夕陽にきれいに映えていました。

終了後、周産期センターのスタッフとともに船戸先生を囲む会の様子です。船戸先生、2日間にわたりありがとうございました。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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11月22日(金)に大阪発達総合療育センターの船戸 正久先生をお招きして災害時における医療的ケア児支援に関する講演会を開催しました。

会場は県民福祉プラザで一番大きな県民ホールです。

船戸先生の熱いお話が始まります。

以前もご紹介したように、大阪では普段から小児在宅医療の患者さんが日常の活動の中で把握されており、大阪北部地震や台風21号のような災害時にも平時の延長線上として対処されたとうかがっています。今回のご講演では災害時小児周産期リエゾンも含めて災害対策の大枠からお話しして下さいました。

大阪では2016年4月に発生した熊本地震を受け、2017年7月に在宅医療的ケア児の緊急レスパイト訓練が行われたそうです。熊本地震では、福祉避難所ではなく平時から機能しているネットワークが中心となって避難が必要な在宅重症児を施設に緊急レスパイトしたそうで、この訓練もその経験を踏まえてのことだそうです。


大阪ではこの訓練の翌年の6月に大阪北部地震が発生し、さらに9月には台風21号にも襲われます。前年の訓練の反省を活かし、さらに実際の災害対応の反省も活かしながら、大阪における災害対策が進化している様子がとても印象的でした。

特に台風21号では広範囲で長時間の停電があったため、緊急レスパイトには従来の入院・入所だけではなく、空床がなくても電源と場所の確保だけでも対応するなどの柔軟さが求められると言うご指摘もその通りと感じました。

講演会が終了し、船戸先生を囲んでの懇親会を終えての集合写真です。この翌日には生命倫理に関する講演会もあり続いてご紹介します。実は、今回の災害時のご講演は、最初に生命倫理のご講演の企画があり、そこに船戸先生をお招きするのであれば災害時のご講演もお願いしなくては!と言うことで実現に至りました。特に本県のようにレスパイトに事欠くような状況が災害時においてもリスクとなると言う点において大阪での取り組みはきっと参加された県内関係者にも大きな影響を与えたことと思います。船戸先生、ありがとうございました。

(文責 成育科 網塚 貴介)

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昨年度、県の新規事業として新たに開催された医療的ケア児コーディネーター養成研修会(正確には青森県医療的ケア児等支援者養成研修及び コーディネーター養成研修会)を受講された皆さんを対象としたフォローアップ研修会が今年2月と5月には弘前市でも開催されましたが、その第3弾として、今回は八戸市内でコーディネーター研修会を有志の皆さんが開催して下さったので参加してきました。今回は2017年に八戸市で開催された「在宅ケア全国の集い in はちのへ」の時に会場にもなっていた八戸ポータルミュージアム“はっち”でした。

この施設はミュージアムと言うだけあって、訪れる度に違った展示がされています。



フォローアップ研修会も回数を重ねてきたこともあり、皆さん、和気あいあいな感じです。

最初に中心メンバーである清水さん、成田さんと八戸市民病院の奥寺さん達からの講義や説明の後、参加者により事例検討のワークショップが行われ、最後にまとめを発表したりとなかなか濃い内容でした。最近、こうして福祉職の皆さんとご一緒することが増えてきており、知らないことばかりで非常に勉強になります。


フォローアップ研修会終了後の集合写真です。

研修会終了後は恒例の飲み会です。これもまた毎回楽しみにしています。今回は地元のサッカークラブであるヴァンラーレ八戸のサポーターをされている方のお店だったこともあり、独自開発されたチームカラー色のビールも美味しくいただきました。


最後に代表の清水さんからのご挨拶があり、次回は年明け3月に当院で開催する方向となりました。

さて一夜明けて、翌日は八戸駅から新青森を通過して、青森県小児保健協会学術集会に参加するため弘前市へ向かいました。今回は講演で「青森県における医療的ケア児支援体制構築の現状と課題」と題して、現在までの医療的ケア児支援における取り組みの現状を中心にお話しさせていただきました。少しずつですが支援の輪が拡がっていることを感じられた週末でした。



(文責 成育科 網塚 貴介)

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